スパコン世界ランキングGreen500リストで1~3位を独占! 日本のベンチャーPEZYグループが快挙
7月には、日本のスパコン「京」がスパコンの国際的な性能ランキングである「Graph500」で再び1位に返り咲く快挙を成し遂げたのに続いて、日本のスパコン研究に明るいニュースです。
スーパーコンピュータ(スパコン)開発を手がけるPEZYグループは、8月1日に発表されたGreen500リストで、PEZYグループが開発したスパコンが1位から3位までを独占したことを発表しました。独立系ベンチャー企業が1位になったのは世界初とのこと。
京が1位となった「Graph500」が純粋に処理性能を競うランキングであるのに対して、Green500リストは、世界で最もエネルギー消費効率の良いスパコンをランク付けするプロジェクト。主な指標として、消費電力当たりのLINPACK測定性能である「FLOPS/ワット」を採用、より少ない電力で高い計算性能を叩き出す省エネ性能が重視されるランキングです。
日本勢では、2013年11月と2014年6月に東京工業大学がスパコン「TSUBAME-KFC」で1位を獲得していますが、日本の企業が1位となったのはこれが初めてとのこと。
PEZYグループが開発し、理研に設置されているスパコンが1位に、また同じくPEZYグループが開発し、KEK(高エネルギー加速器研究機構)に設置されているスパコンが2位と3位にランクされました。東工大開発のTSUBAME-KFC-LXは今回5位にランクインしています。
また、PEZYグループによると、東工大のTSUBAME-KFCはCPUやGPU、マザーボード、冷却装置など基本的な構成装置は全て海外から調達して組み上げたものであるのに対して、PEZYグループのスパコンはほぼ全ての技術をゼロから独自開発し、日本国内企業が製造したものとのことで、「京」と同様、純国産の独自スパコンとなります。
現代においては、医療分野や気象、産業デザインなど多くの分野でスパコンの性能向上が求められており、産業競争力や国家安全保障にも結びついてくるだけに、企業間だけでなく国家単位でも熾烈な開発競争が繰り広げられています。
Green500ランキングでは、2011年~2012年はIBMのBlueGeneなど米国勢が上位を占めていたのですが、2014年からは日本や欧州勢に加えて中国も台頭してくるなどで米国のランキングは下落。こうした状況を受けてか、米国では7月29日にオバマ大統領が「戦略コンピューティングイニシアチブ」の大統領令を発令して、世界最速コンピュータの早急な開発を目指しています。
PEZYグループについて
PEZYグループは、メニーコアプロセッサを開発する株式会社PEZY Computing、主に液浸冷却装置の開発・製造・販売を手がける株式会社ExaScaler、超広帯域3次元積層メモリーを開発するウルトラメモリ株式会社の3社で構成。最も古いPEZYも2010年創業で、株式会社ExaScalerは2014年に設立されたばかりというベンチャーグループです。
PEZYグループ創業者/代表取締役社長で医学博士号を持つ齊藤元章さんは、放射線科の医師として東京大学医学部附属病院で勤務した後、1997年に仲間と共にシリコンバレーへ移住し医療系先進画像処理システムの研究開発会社を設立。日本人では初めてComputer World Honors(米国コンピュータ業界栄誉賞:医療部門)を受賞しました。
東日本大震災を機に、日本へ拠点を戻し独自大規模プロセッサに特化した開発をスタート。2014年からは本格的にスーパーコンピュータ開発に注力してきたとのこと。わずかな期間で世界トップに踊り出た開発力は、ランキング1位獲得で注目を集めそうです。