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【レポート】クラウドファンディングで話題のアニメ映画「この世界の片隅に」片渕須直監督トークイベント~“作品を見てもらうことの難しさ”

[2015/6/9 15:41]

 5月16日から北九州市漫画ミュージアムにて「アニメ映画『この世界の片隅に』レイアウト展~戦時下の暮らしを調べ、描き、残す~」が開催中です。


クラウドファンディングで目標額の2,000万円をわずか8日間で達成、最終的には3,622万円を集めて話題になった、アニメ映画「この世界の片隅に」キービジュアル。現在制作進行中です


 アニメ映画「この世界の片隅に」は、マンガ家・こうの史代さんが描く同名マンガが原作。アニメ映画化にあたっては、3月9日よりサイバーエージェントの「Makuake」にてクラウドファンディングを開始したところ、目標額の2,000万円をわずか8日間で達成しました。

アニメ映画「この世界の片隅に」オフィシャルサイト

 5月29日の終了時には、目標額の約1.8倍にあたる3,622万4,000円が集まり、クラウドファンディングにおける邦画史上最高額を記録したことでも話題となりました。2,000円から支援可能と手軽なコースも設けられていたこともあり、サポーターの数は3,374人に上り、支援の輪が大きく広がった形です。

 この成果を受けて6月3日に映画の制作が正式に決定、発表されました。2016年秋に公開を予定しています。

片渕須直監督が北九州市漫画ミュージアムに来館!

 6月6日には、アニメ映画「この世界の片隅に」の制作にあたっている片渕須直監督が北九州市漫画ミュージアムに来館し、トークイベントが実施されました。


片渕須直監督


 映画制作の準備そのものは2011年からスタートしており、これまでにもレイアウト展やトークイベントも行われていますが、クラウドファンディングで話題になり、制作の正式決定が発表された直後だけにトークイベントにも注目が集まっていました。

 「この世界の片隅に」は広島が舞台。レイアウト展では、現地へ訪問を重ねた綿密な取材の一端が垣間見られます。

 片渕監督は、それらの展示物に触れながらトークを展開。たとえば、公式サイトでも見られる街中のビジュアルについて、その中心に描かれている「大正屋呉服店」は原爆投下後も破壊されずに残り、現在は「平和記念公園レストハウス」として利用されていると紹介。周囲に描かれた建物からは、取材の成果を実感することができます。

 トーク後の聴衆からの質問に答えて、片渕監督は“作品を見てもらうことの難しさ”に言及。「アニメ映画は子供向けのものとマニア向けのもの以外だと、他に引っかかりがないため目に止まりにくく、頑張って作ったとしても、そういう作品があることを世の中の人が知らないまま終わってしまう」と指摘しました。

 映画館に行く・行かない以前に、そもそも作品の存在を知らなければ、「見るか見ないかという選択肢に入る以前の問題であり、間口が狭くなってしまいがちなところの打破の方法があるなら知りたい」と語りました。

 こうした片渕監督の思いは、クラウドファンディングのページ(https://www.makuake.com/project/konosekai/)でも述べられていて、2,000円コースを設定したのも、できるだけ多くの人に知ってもらいたいことからと書かれています。

 北九州市漫画ミュージアムでの展示は7月10日(金)まで。


北九州市漫画ミュージアムで開催中のアニメ映画「この世界の片隅に』レイアウト展」会場。展示から、映画制作のための取材の厚みを実感できます。


 「この世界の片隅に」と関連したイベントは今後も予定されており、近いところでは、6月20日(土)に、静岡県浜松市で「片淵須直監督パネルトーク 日本のくらし/戦時の日常生活」が開催されます。

 また、6月27日(土)・28日(日)の2日間にわたって、広島のJMSアステールプラザで開催される「広島メディア芸術振興プロジェクト~広島ゆかりの作家、作品展」でも、アニメ映画「この世界の片隅に」の制作資料展展示が行われます。入場は無料。28日(日)13時からは片渕須直監督のトークショーも開催されます。

 こうしたイベントの開催については、「この世界の片隅に」公式Twitterで随時告知されています。「この世界の片隅に」や、アニメ制作の背景に興味のある方は要チェックです!

[真狩祐志]