第一東京弁護士会が弁護士への嫌がらせに声明を発表。2ちゃんねる・なんJ民の“仁義なき戦い”に終止符となるか
今年4月頃に「Google マップ」の複数地点にでたらめな施設名などを書き加えるいたずらや嫌がらせが横行。皇居に「オウム支部」、警視庁に「サティアン」など、Googleマップ上のさまざまな地点の施設名が表示されました。
こうした悪ふざけに、当時警視庁が捜査に着手したとの報道もあり、12月1日、ついに男性3人が軽犯罪法違反(いたずら業務妨害)で書類送検されました。
警察のお世話になるユーザーが出たことでGoogleも2日に以下のコメントを発表。世間を騒がせたことを謝罪しました。
「不適切な場所情報がGoogle マップに表示されたことについて、改めてご迷惑、ご心配をお掛けしたことをお詫びいたします。Google マップには、ユーザーから新店舗の開業や既存店舗の移転等に関する場所情報が寄せられており、その大多数は有益なものです。Googleでは、不正確な場所情報の検出や防止をはじめとする対応を強化しています。」
Googleのコメントにある通り、Googleマップ上に施設や店舗の情報を追加する機能は広く一般ユーザーに解放されているもの。「改ざん」という表現を使った報道も見られますが、公開されている機能を使って、通常の手続きで施設名などを登録したもので、不正にアクセスしたり、改ざんを行ったわけではありません。
問題は、その情報がまったくのでたらめという点。でたらめというだけでなく、登録された情報の多くは第一東京弁護士会に所属する唐澤貴洋弁護士を困らせることを目的としたもの。そのため、唐澤弁護士の所属する弁護士事務所「恒心綜合法律事務所」の名称から取ったと思われる「恒心教」などの架空名称で多くの施設登録が行われていました。
唐澤弁護士への嫌がらせはGoogleマップの書き換えだけではありません。唐澤弁護士が所属する「恒心綜合法律事務所」サイトが書き換えられたのをはじめ、アニメ公式サイト、地方のテレビ局公式サイトなど関係のないサイトのトップページを書き換えて唐澤弁護士の似顔絵を載せるといったハッキング行為も何度も繰り返されてきました。
そのほか、「唐澤貴洋 詐欺 ボッタクリ」などと繰り返し掲示板などに書き込むことで検索エンジンに関連ワードとして認識させようという「サジェスト汚染」や、唐澤弁護士の名前と似顔絵を使って登録したTwitterアカウントで人を怒らせるようなツイートをするなど、ありとあらゆる嫌がらせの手法が編み出されてきました。
なぜ唐澤弁護士がターゲットになったのか
唐澤弁護士に数々の、いたずらというには悪質な嫌がらせを繰り返してきたのは、2ちゃんねるの「なんでも実況J板」住人、略して「なんJ民」と見られています。
「なんJ板」は野球実況を中心とした雑談板。そこで「自分語りスレ」を乱立させたり、盛り上がっているスレッドを煽りレスで荒らすなどの“荒らし”行為を2年以上にわたり続けていたコテハン(固定ハンドルを名乗るユーザー)が身バレしたのがことの始まりです。
「なんJ板」は2ちゃんねる全体でも1、2を争う書き込みの多い、利用者の多い板ですが、もともと実況用ということもあって、ニュース系の板に比べて保持スレッド数が非常に少ないという特徴があります。
たとえば、ニュース速報+板は800程度、芸スポ速報+板は700程度のスレッド保持が可能ですが、なんJ板のスレッド保持数は50を超える程度。「自分語り」スレを乱立させるとすぐに他のスレッドが落ちて閲覧できなくなってしまいます。このため、「自分語り」スレの迷惑度は他板に比べはるかに大きく、またユーザー数が多いことで、荒らし行為を繰り返していた当該コテハンは多くのユーザーのヘイトを集めていました。
身バレしたことで、いったんは荒らしコテハンも反省の弁を書き込んだものの、同時に“警察に通報する”、“裁判を起こす”などといった脅しをちらつかせたり、友人を装っての自演がバレたりして、逆に火に油を注ぐ結果に。また荒らしコテハン本人が、過去に身バレした他のコテハンの本名を執拗に書き込むなどして積極的に追い込んでいたことなども指摘され、「同情の余地なし」という空気が大勢を占めるようになりました。
炎上が収まらないことから、荒らしコテハンは弁護士に対処を依頼。依頼した弁護士が、唐澤弁護士でした。これが2012年3月のことです。
第一東京弁護士会の声明は、ゲーム感覚の“仁義なき戦い”に終止符を打てるのか
唐澤弁護士は気の毒としかいいようがないのですが、そこまでに荒らしコテハンがなんJ住民の怒りを買いすぎていたこともあり、2ちゃんねるで荒らしコテハンの個人情報書き込みの削除依頼や開示請求を行った唐澤弁護士自身もターゲットに。
身バレした2012年3月からすでに3年半が経過していますが、唐澤弁護士も荒らしコテハン自身も、現在もなお、一部「なんJ民」のターゲットにされています。唐澤弁護士に対する殺害予告書き込みなどは数えきれないほど行われていて、100万回を超えるという説も。書き込まれすぎて、2ちゃんねるではいまでは誰もがスルーするようになっています。
また、月日が経過したことで、唐澤弁護士の似顔絵はもはやフリー素材感覚に。あちこちに貼られ、勝手にステッカーが作られて電信柱に貼られたり、似顔絵を使ったなりすましアカウントも次から次に作られています。
唐澤弁護士は3年以上にわたって迷惑行為のターゲットとされてきたわけですが、今回、Googleマップ上のでたらめ情報登録で男性3人が書類送検されたのがきっかけとなったのか、唐澤弁護士の所属する第一東京弁護士会は会長名で以下の声明文を発表しました。
「今般、オンライン地図サービス改ざんによる軽犯罪法違反(弁護士事務所に対する悪戯による業務妨害)の容疑で、3名が書類送検されたとの報道がなされた。
被害者の唐澤貴洋氏は、当会に所属する弁護士である。上記事件について有罪が確定しているものではないが、同弁護士に対しては、他にも、ネット上での誹謗中傷、危害を加える旨の告知、その他種々の嫌がらせ(業務妨害行為)が続いており、過去に逮捕者も出ている。
弁護士に対するこの種の業務妨害行為は、弁護士制度に対する重大な挑戦であり、当会は断固抗議する。そして、今後も業務妨害行為に屈することなく、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のため全力を尽くす所存である。」
声明文では、弁護士会をあげて唐澤弁護士への誹謗中傷や殺害予告などに本気で対応することが、非常に強い調子で宣言されています。
すでに3年以上が経過していることで、現在も荒らしコテハンや唐澤弁護士にいやがらせを続けているのは一部のユーザーと見られ、なんJ板でも「いいかげん飽きたからもうよそでやれよ」「残りも逮捕されろ」など執拗に嫌がらせを続けるユーザーに対して批判的な書き込みも少なくありません。
ただし、弁護士会の声明が出た12月2日の午後20時ごろには、Googleマップ上の第一東京弁護士会の情報に唐澤弁護士の似顔絵がさっそく貼られるなど、相変わらずゲーム感覚で悪さをするユーザーもいるようです。なお23時現在、唐澤弁護士の似顔絵は第一東京弁護士会の情報から削除されており、サービスを運営するGoogle側での対処が早くなっているようです。
弁護士会の声明で、ゲーム感覚の嫌がらせが止まるかどうかはまだわかりません。