京セラが毛髪再生医療研究に参入。2020年に実用化を目指す~理研のヌードマウスでの成功をビジネスモデルとして具体化へ
京セラ、理化学研究所、オーガンテクノロジーズの3者が、再生医療分野である「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関する共同研究契約を締結し、毛包器官を再生して脱毛症を治療する技術や製品の開発を共同で実施することを発表しました。
共同開発の背景として、脱毛症は日本全国で1,800万人以上(出典:男性型脱毛症診療ガイドライン2010年版)の患者が存在すると言われ大きなマーケットになっているものの、今までの治療技術は全ての症例に有効ではないことを挙げています。
これまでに、理研多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームは歯や毛包、分泌腺(唾液腺、涙腺)など幅広い種類の器官再生が機能的に可能であることを実証しています。一方、器官の中で唯一、毛包は出生後に再生(毛周期)を繰り返す器官であることが知られています。
研究チームは2012年、成体マウスのひげや体毛の毛包器官から、研究チームが開発した「器官原基法」により毛包原基を再生する技術を開発。この再生毛包原基を毛のないヌードマウスに移植すると、再生毛包へと成長し、毛幹(毛)を再生できることを実証しています。
さらに2016年4月に、研究チームはiPS細胞から毛包器官や皮脂腺、皮膚組織を丸ごと含んだ機能的な皮膚器官系の再生にも成功しています。
これらの最先端の毛包再生技術をヒトの脱毛症治療へと展開するために、今後、京セラと理研、オーガンテクノロジーズの三者が協力し、ヒトへの臨床応用に向けた共同研究を実施するとのことです。細胞培養技術や移植技術の確立、および移植に向けた機器開発を進め、2020年の実用化を目指すとしています。
京セラは、長年培ってきた微細加工技術や生産技術を応用し、細胞加工機器の開発などの技術開発を担当。理研、およびオーガンテクノロジーズは、毛包由来幹細胞の培養・増幅技術やヒトへの臨床応用に向けた細胞操作技術の開発、製造工程の確立、モデル動物を用いた前臨床試験などの技術開発を担当するそうです。
毛包再生医療は、患者自身の毛包から幹細胞を採取して加工し移植する自家移植が中心となり、最も患者数が多い男性型脱毛症では、医療機関で少数の毛包を採取し、受託製造会社が毛包から幹細胞を分離して、培養、増幅し、器官原基法により再生毛包原基を製造します。
この再生毛包原基をパッケージして医療機関へと搬送し、医療機関において患者様に再生毛包原基を移植治療することになります。京セラでは、将来のヒトでの臨床応用を見据え、オーガンテクノロジーズと連携してこのビジネスモデルの受託製造会社へと発展することを目指して、まずは2年間の本共同研究において実用化への道筋をつけ、受託製造のビジネスモデルの具体化を進めていくとしています。