手術後のわいせつ容疑で逮捕された医師の勤務病院が不当逮捕と警視庁へ抗議文~「手術後せん妄状態と確信。警視庁による不当な逮捕である」
非常勤の男性外科医が手術後にわいせつな行為をしたとして逮捕した警視庁に対し、外科医が所属する医療法人財団健和会柳原病院が不当逮捕だとする抗議文を、2016年8月25日に公開しました。病院側では、「全身麻酔手術後患者の訴えのみを根拠とする警視庁による不当な逮捕」としています。
報道などでは、5月10日に女性患者が柳原病院でこの男性外科医による右乳腺腫瘍の摘出手術を受けあと、手術後に麻酔で体の動かない女性に対し、診察を装って病室で着衣を脱がせ、左胸をなめるなどした疑いがあるとしています。
女性が相談した会社の上司が警察に通報した後、女性が被害届を出し、警視庁千住署では8月25日になって、外科医を準強制わいせつの疑いで逮捕。外科医は「やっていません」と容疑を否認していると報道されています。
柳原病院では女性患者の被害届を受けて、関係した職員より聞き取りや、病室とベッドの位置、ベッド高さなどの現場検証を行ない、6月9日には女性患者の申請に基づいて全診療記録を警察署へ持参したという。7月7日には、それらの検討からわいせつな行為はなく、捜査を速やかに終了するよう求める申入書を同院顧問弁護士名で提出したとのこと。
その際警察は、女性患者の身体からの採取物から物証があったと明言することはなく、これ以上の捜査協力を要請する根拠も理由も示せず、以降千住警察からは一切の問合せもないまま、8月25日突然の逮捕となったとしています。
なお、女性患者は5月11日、27日の術後診察を外来で受診し、半年後の経過観察の診療予約も行なっているとのこと。
同院の調査では、術後の供述は、全身麻酔による手術後35分以内のことであり、「手術前の恐怖や不安と全身麻酔で行った手術後せん妄状態での幻覚や錯覚が織り交ざったものと確信する」としています。
さらに女性患者は、満床在室の4人部屋におり、術後の経過観察に看護師が頻回に訪床し、多くの目がある環境の中で供述の様な事が誰にも知られず行なわれたとは考えらず、医学的、客観的に状況や経緯を検討し、その調査結果を警察に提示。
それにもかかわらず、警察は「女性患者の証言に信憑性がある」と判断して逮捕にまで踏み込んだに対して、「この様なことが許されれば、今後、施術医師が術後診察に病室を訪れることを躊躇う要因ともなり、正当な医療行為に制約を付すことになりかねない」と問題視。
さらに、逃亡のおそれ、証拠隠しのおそれなどのなく、多数の患者の健康をあずかる医師を逮捕し勾留することは、「自白強要を目的とするものと言わざるを得ないと」し、「厳しく糾弾するとともに、警察当局に謝罪を求め、この様な強引で不当な捜査を直ちに止め、速やかに釈放するよう求める」と強く抗議しています。