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三省堂が本気出した!? 「猫の国語辞典」を刊行~小林一茶、正岡子規、北原白秋ら500名の“猫の句”2,400を収録

[2016/11/21 17:21]

 三省堂が、「俳句・短歌・川柳と共に味わう 猫の国語辞典」(佛渕健悟・小暮正子編)を11月21日より発売しました。四六判256ページで、1,500円(税別)。

 掲載されている猫の句は、江戸から昭和までの俳句・短歌・川柳の作者、小林一茶、正岡子規、日野草城、北原白秋、西東三鬼、橋本多佳子、種田山頭火……500名の作品から集めています。猫を愛した作家たちといっしょに、ゆっくり、じっくり、じわっと味わう本となっています。同社では「あなたの好きな句を見つけて、猫の写真や絵手紙などに添えてみませんか?」としています。

 五十音順、猫の性質や動作などをキーワードにして約800の見出しをたてて、猫の句2400を分類。歴史的仮名遣いにはふりがなを、難しい語には注がついています。見出しは、「愛猫」、「あくび猫」、「洗い猫」、「怒る猫」、「稲妻におびえる猫」、「猫もどる」、「猫帰らず」、「猫の別れ」、「恋負け猫」、「叱られた猫」、「猫の化粧」、「猫の契り」、「貰われて行く猫」などなど。

・紅梅や縁に干したる洗ひ猫 一茶             「洗い猫」8頁
「洗濯されちゃったわけではなくて縁側の濡れ猫をこう詠んだんだね。うまいにゃあ」

・こんなに晴れた日の猫が捨てられて鳴く 種田山頭火       「捨猫」64頁
「放浪の俳人と言われた山頭火も、捨猫を見捨てられず、つらいにゃん」

・葬る時むくろ[骸]の猫の鈴鳴りぬ 日野草城          「猫の鈴」151頁
「ドキっ。一瞬猫が生きかえった気がしたんだね。悲痛な気持ちが痛いほどだにゃん」

・恋猫のあはれやある夜泣寝入 正岡子規            「恋負け猫」45頁
「とほほ。恋に破れて飼い主にも同情されて、あわれだにゃあ」

・愛しさや恋負け猫が食欲れり 橋本多佳子           恋負け猫」45頁
「やっぱり女の飼い主さんはたのもしいにゃ。やけ食いする猫が可愛いなんて」

・叱られて目をつぶる猫春隣 久保田万太郎         「叱られた猫」56頁
「猫を飼った人ならすぐわかる光景だ。目つぶってごまかす。猫の特技だにゃん」

・捨てられる話を猫は横で聞き 愁夢[川柳]         「話を聞く猫」208頁
「これはつらいなあ。猫は人が自分の話をしてること、分かるからにゃん」

・帰り来ぬ猫に春夜の灯を消さず 久保より江         「猫帰らず」95頁
「電気代も気にせず心配してくれたんだね。でも明るいと猫は帰りにくいにゃあ」

・鮎やけば猫梁を下りて来し 杉田久女           「猫が来る」97頁
「呼んでも知らんぷりの猫もご馳走となると別。猫の気ままぶりがよく出てるにゃん」

・炎天に一筋涼し猫の殺気 西東三鬼            「猫の殺気」148頁
「うわっ宮本武蔵の決闘か?猫の飛びつく寸前の鋭さをキャッチした句だにゃん」

歌人 松村由利子さん 本書の帯より

この愛らしくも気まぐれな生きものは、俳句という小さな器に収められると、
いっそうかわいさが増すのです。
猫がこの世界に存在する幸いと、
日本に短詩型文学がある幸いを、
しみじみと思わせる一冊。

[古川 敦]