LINE株式会社、運営する「NAVERまとめ」の著作権侵害問題について見解を発表~著作権者からの申告でとりあえず当該まとめを非公開とする対策などを説明
「デマ」「パクリ」と批判を浴びたことで、医療情報メディア「WELQ」を運営するDeNAは、「WELQ」を含むキュレーションメディア10サイトの記事をすべて非公開とし、サイト一時閉鎖しました。
DeNA問題は他のキュレーションサイトにも波及し、LINE株式会社が運営する「NAVERまとめ」についても、画像の盗用、文章のコピペなど多くの著作権侵害が指摘され、批判を浴びています。
こうした批判を受け、LINE株式会社は12月28日(水)になって「『NAVERまとめ』に関する昨今の報道を受けての当社見解について」というリリースを発表しました。
「ユーザー参加型コンテンツで、LINE株式会社は記事の作り方を示したことはない」
LINE株式会社では、「NAVERまとめ」を提供する目的を「参考になったページやコンテンツを、誰でも簡単に検索結果としてまとめることができ、次に探している人に紹介しあう仕組みを作る」と説明。
ただし、「NAVERまとめ」では、実際には“紹介し合う”というよりも、ネット上のコンテンツをあちこちから剽窃して作成するなど、ひらたく言えば“コピペでパクっただけ”の記事となっているケースも多く見受けられます。
こうした批判も意識してか、LINE株式会社はリリースで、「NAVERまとめ」はユーザー参加型コンテンツであり、「当社側からまとめ作成者の皆様へまとめ記事の構成や内容について、具体的な作り方や正解例を示したことはございません」と弁明しています。
「ガイドラインに沿って365日体制の全件監視している」
また、LINE株式会社は「NAVERまとめ」で、「NAVER利用規約」第3条において禁止事項を定め、ガイドラインに沿って365日体制の全件監視を実施していると説明。
禁止事項としては、法令違反、公序良俗違反、権利侵害、虚偽の流布、異性との出会い目的、商用利用、反社会的勢力に対する利益供与、宗教活動などを挙げています。
モニタリング実績としては、作成された全まとめ記事のうち3本に1本、33.7%の割合で非表示処理済みであるとしています。
権利侵害についてはチェック体制なし。権利確認の手間はすべて被害者に丸投げから、まとめ作成者の負担へ
監視は行っているとするLINE株式会社ですが、「著作権、商標権、名誉毀損などの権利侵害については、監視では侵害の有無を確認することができない」として、プロバイダ責任制限法に沿って対応を行っているとのこと。
また、LINE株式会社はリリースで「著作権者の権利を守ることと同様、発信者のプライバシーを保護し個人情報を適切に管理することも我々の責務」としています。
とはいえ、前半の著作権者の権利はまったく守られていない/守る配慮がなされていない一方で、著作権侵害まとめの作成者の権利のみ手厚く保護するのでは、“犯罪者のみ保護している”と批判されても仕方ない面があります(著作権侵害は刑法犯罪です)。
LINE社でもこの点について、「権利侵害申告後の事後対応となってしまう点や、侵害されている権利者側の皆様に手間をお掛けしてしまう点など解決できていない課題がまだ残されております」としており、“手間は被害者に丸投げ”という問題点について、認識はしているようです。
現状の、被害者のみが一方的な負担を強いられるという状況への対策として、LINE株式会社は「みなし非表示対応」の導入と、情報開示請求についての改善を挙げています。
著作権侵害の申告があった時点でまとめを非公開とする「みなし非表示対応」
「みなし非表示対応」は、今年12月8日以降の申告分から、権利者から著作権侵害の申告があった時点で当該「まとめ」で侵害の可能性があると“みなし”て非表示処理を実施。その後、当該「まとめ」の作成者に許諾の有無などの正当性を証明するよう求め、妥当であると判断される場合のみ、表示を再開するというもの。
これまではクレームを寄せた権利侵害の被害者側に強いていたコンテンツの権利者である証明の手間を、作成者側の負担とする対策となっています。
実際に著作権侵害の被害を受けた場合に、被害者から申告しなければならない点は従来どおりではありますが、確認前に当該まとめを非公開とすることで早期に実効性の高い対策と言えそうです。
一歩前進ではあるものの実効性は薄いかも? 情報開示請求についての改善点
情報開示請求についての改善点は、これまでまとめ作成者の同意が得られなかった場合は権利者からの情報開示請求を拒否していましたが、今年12月20日からは、請求者の本人確認に加えて、請求者が著作権者であることや著作権の侵害が事実であること、発信者による著作物の利用を正当化する事実がないことが確認された場合は、情報の開示を行うことに改めたとしています。
情報開示の道はいちおう開けた形にはなりますが、請求者は、本人確認、請求者が著作権者であること、著作権の侵害が事実であること、発信者による著作物の利用を正当化する事実がないことを証明するなどの作業に関わる負担を強いられることになります。
とくに、「発信者による著作物の利用を正当化する事実がないことを証明する」のは「ないことを証明」するわけで作成者の強力が得られない場合には難しく、情報開示までたどり着くことは非常に困難と思われます。
運営は批判まとめ作成者のアカウント停止やブラックリスト化や、批判まとめのnoindex化はしていない
「NAVERまとめ」で画像や文章を盗用されたと訴える人などが「NAVERまとめ」を批判するまとめを作成したところ、アカウント停止された、あるいは批判まとめの作成者をブラックリスト化している、といった告発文がネット上で見られます。
批判まとめ作成によるアカウント停止については、LINE株式会社は「今回のようにアカウントにログインできなくなるケースで考えられる原因としては、ID/パスワードの入力ミス、または利用しているソーシャルログインのアカウント間違いなどが考えらます」と説明。停止は行っていないという明言はないものの、原因はユーザーのアカウント管理の問題だろうとしています。
また、批判まとめ作成を理由にブラックリストに登録することはないとしています(こちらについては明言)。新規にアカウント作成ができなかった理由としては、新規登録しようとしたアカウント名に、アカウント名に含めることができないNGワードが含まれていたことなどが考えられるとしています。
批判まとめについても、LINE株式会社やNAVERまとめを批判するまとめであることを理由にnoindex処理を行うことはないと明言しており、分量など一定の基準を満たしていないことからnoindex処理されたものではないかと説明しています。
「今後は一次著作権者が転載の可否を設定できるようにし、インセンティブ還元も考える」
DeNAのキュレーションサイト問題に端を発し、類似問題として「NAVERまとめ」にも火が付き、コンテンツ盗用への不満や批判が噴出しているのが現状。
LINE株式会社はこれについて、「権利者が自身の権利を適切に管理でき、著作物が得る価値を最大化できるようになることが大切であると考えています」と説明。
「1次コンテンツの権利関係を弊社側で把握し、その上で権利者の皆様が『NAVERまとめ』上でのコンテンツの利用範囲を自由に管理する仕組みがあれば、著作権者からの都度の申告が無くとも、権利侵害の有無を確認すると共に、コンテンツの利用や閲覧などに応じて、より多くのメリットを著作権者に対して生むことも可能であると考えています」と説明しています。
具体的な方策として、「まとめ作成者にオーサーランクを適用」「1次情報提供者へのインセンティブ還元及びまとめ掲載可否設定の実現」を挙げています。
ただし、オーサーランクの適用については、オーサーランクがどのように利用されるのかが明らかにされていない現状では、著作権侵害問題にどのように役立つのかわかりません。
また、「1次情報提供者へのインセンティブ還元及びまとめ掲載可否設定の実現」についても、結局のところ、1次情報提供者がこれはダメ、これはOKという設定を行う必要があると思われます。つまり、「NAVERまとめ」に盗用されないために、余計な作業を強いられることになりかねません。
LINE株式会社は、「コンテンツがまとめ記事で紹介された場合、貢献の指標に応じて、1次情報提供者にもインセンティブを還元することなどを検討しています」とも述べています。
当然のように予想される、「NAVERまとめに盗用されないために、なんで俺がそんな余計な手間かけなくちゃならないんだよ!」という一次著作者の不満を抑えられるかどうかは、インセンティブ還元の内容しだいかもしれません。