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いったい何があった? Amazon Kindleストアで佐藤秀峰氏が「ブラックジャックによろしく」のタイトルを「ブラックジャックによろちんこ」に変更→現在販売停止中

[2017/7/29 17:36]

 現在、佐藤秀峰氏による人気コミック「ブラックジャックによろしく」が、Amazon Kindleストアでは「ブラックジャックによろちんこ」というタイトルで表示され、「調査中の商品」として購入できなくなっています。

「ブラックジャックによろしく」のタイトルが「ブラックジャックによろちんこ」に。現在Kindleストアでは販売停止中


どうしてこんなことに? 作者・佐藤秀峰氏がTwitterで公開したコトの起こりは

 「海猿」や「ブラックジャックによろしく」などの作品で知られる漫画家の佐藤秀峰氏は7月26日(水)、Amazon KDPで販売していた「ブラックジャックによろしく」をAmazon側が無断で価格を0円に変更したことをTwitterで明らかにしました。

 佐藤秀峰氏Twitterによると、価格が0円になっていることに気づいた佐藤氏がAmazonに問い合わせたところ、「他のサイトで無料で配信されてるからそれに合わせて無料化(プライスマッチという)したそうで、お金も払う気ない」という回答がAmazonからあったとのこと。

 佐藤秀峰氏は「ブラックジャックによろしく」を佐藤氏が代表を務める有限会社、佐藤漫画製作所で無料配布し、商用非商用とも自由に利用できると定めています。

 ただし、佐藤秀峰氏は「Kindleは自分で配信したいから」、利用規約には「Amazon Kindleストアでの取扱いは、個別の許諾がない限り一切できないものとします」との一文が入っています。

佐藤漫画製作所の「ブラックジャックによろしく」フリーダウンロードページに明記された規約には、「Amazon Kindleストアでの取扱いは、個別の許諾がない限り一切できないものとします」と定められています

 佐藤秀峰氏は、Amazon Kindleストアで自ら配信するため、Amazon KDP(Kindle direct publishing)を利用していたのですが、Amazon KDPの規約に「プライスマッチ」という要項があります。

 その内容は、ひらたく言えば「他社ストアでAmazonより安く販売している作品はAmazonの独断で価格を下げるよ」というもの。他社ストアで無料で配信していたらKindleストアでも無料にする、その場合はロイヤリティもゼロ円になると明記されています。

他社サイトで安くしている商品はAmazonが独断で価格を下げることができる「プライスマッチ」というAmazon KDPの価格ルール

 他の電子書籍サイトでは、佐藤漫画製作所でフリーダウンロードできる「ブラックジャックによろしく」を0円で配信しています。これに合わせて、Amazonは「プライスマッチ」のルールを適用して0円に下げたという経緯のようです。

 ただし、佐藤秀峰氏によると、佐藤漫画製作所で無料公開している「ブラックジャックによろしく」と、Amazon Kindleストアで配信しているデータは別もの。

 Kindle KDPで佐藤秀峰氏自ら配信していたKidle版は、「『kindle用に作った高画質版』=『生原稿から製版所でデータ化してトリミング、リサイズしたもの』だから、画質が良い」とのことです。また、Kindle KDPは佐藤秀峰氏自身が配信していますが、他の電子書籍販売サイトで配信しているのは佐藤秀峰氏自身ではないため、配信者も違うと指摘しています。

佐藤氏が対抗策としてタイトルを「ブラックジャックによろちんこ」に→販売停止

 佐藤秀峰氏がTwitterで明かしたところによると、0円になってから配信停止まで、約1万5,000のダウンロードがあったとのこと。

 Amazon側からKindle KDP規約「プライスマッチ」をたてにロイヤリティは支払わないという返答があったことを受けて、佐藤秀峰氏は7月28日(土)、対抗策として自ら配信しているKindle KDPのデータを差し替え。

 「ブラックジャックによろしく」のタイトルを「ブラックジャックによろちんこ」に変更するという対抗手段を取りました。

 このため、Amazon Kindleストアには「ブラックジャックによろちんこ」の1巻から13巻までがずらっと並ぶ事態となっています。

 佐藤秀峰氏によるとデータ差し替え後、タイトルを修正するまで当該作品を販売中止にするというメールがAmazonから来たとのこと。7月29日(土)16時30分現在では、「ブラックジャックによろちんこ」シリーズは「調査中の商品」と表示され、購入できなくなっています。

 「他でこれより安いところがあったら値引きします」を配信者に断りなくやれてしまうという「プライスマッチ」規約は、電子書籍市場では圧倒的なシェアを持つAmazonならではという印象。

 ネットでは、「断りなしに下げるのはどうかと思う」など、Amazonのやり方に違和感を感じるという意見が見られます。

 ちなみに、「プライスマッチ」は、Kindle KDPに限った問題で、出版社とAmazon間ではお互いの取り分がそれぞれ決まっており、Amazonが独断で価格を下げた場合、出版社へ支払われるロイヤリティが下がることはありません。

「ブラックジャックによろちんこ」の決着にネット民も注目

 佐藤秀峰氏の「ブラックジャックによろしく」は、無料で読めることもあり、どこの電子書籍サイトでも人気の作品。Amazonとしては、他社ストアで人気の作品がKindleストアでは読めないというのもあまりうれしくない事態と思われます。

 現在Amazonで配信停止中の「ブラックジャックによろちんこ」は配信停止のままとなるのか、それともAmazon、佐藤秀峰氏のどちらかが歩み寄るのか、ネットで注目されています。

[工藤ひろえ]