ライフ

千原ジュニア、14歳当時のひきこもり経験を語る「せいじがいなければ、まだ部屋にいた可能性もぜんぜんある」~元農水事務次官の長男殺害事件で

[2019/6/4 14:42]

 お笑いコンビ「千原兄弟」の千原ジュニアさんは6月4日(火)、TBS番組「ビビット」に出演。元農水事務次官の長男殺害事件に絡んで、元引きこもり当事者として自身の経験を語りました。

お笑いコンビ「千原兄弟」。左が弟の千原ジュニアさん、右が兄の千原せいじさん(吉本興業 公式プロフィールより)


「しんどい感情を抱きながら、その部屋にずっといた」

 千原ジュニアさんは、中高一貫教育の私立中学に進学し、中学で引きこもりになり、先にNSC(吉本総合芸能学院)に入学していた兄の千原せいじさんに半ば強引に誘われNSCに入学。高校は1日も行かず、2カ月で退学しています。

 元引きこもり当事者としてコメントを求められた千原ジュニアさんは、「14歳から15歳までひきこもってました」と自らの引きこもり体験について説明。

 「その時は感覚としては、神経がほんとむき出しで、ほんとにビリビリ…もう、引きこもってること自体に、自分自身違和感を感じながら、でも引きこもるというか、その場所にしか居れないという」、「周りに比べられる対象物がたくさんある、同級生とか。その同級生なんかと違うということもつねに感じて、ほんとにこう、しんどい感情を抱きながら、その部屋にずっといたという感覚」と当時の心境を語りました。

 ただし、そうしたひりひりした感覚はずっとは続かないと思うとコメント。

 何十年という長期にわたってそこまで敏感で居続けることが難しくなることや、同級生などが社会に出ると直接的な比較対象もなくなってきて、そこが居心地良くなってくる可能性を指摘。

 また、「14歳から15歳の1年の長さと、たとえば54歳から55歳の1年の長さってまったく違うじゃないですか、濃さも。それはやっぱり15分の1と55分の1って、全然時間軸が違うから、そこで抜け出せなくなっていく部分」と、何年も引きこもり生活を送っていると、“惰性”で続いてしまう部分があるのではないかと示唆しました。


「せいじが居なければ、まだ部屋にいた可能性もぜんぜんある」

 被害者の長男は、千原ジュニアさんが引きこもり始めた14歳ごろの時に、親に対して非常に暴力的になっていたと報道されています。

 実際、長男は本名アカウントのTwitterでも「中2の時、初めて愚母を殴り倒した時の快感は今でも覚えている」「もし殺人許可証とかもらったら真っ先に愚母を殺すな」などとツイートし、母親への激しい憎悪と攻撃性を隠していません。

 この点について、堀尾正明さんが「被害者はジュニアさんと同じくらいの時に、親に対してものすごく暴力的になっていたじゃないですか。家庭内にいて、親に対するまなざしっていうのは、ジュニアさんの場合はどういうふうだったんですか」と千原ジュニアさんに質問。

 千原ジュニアさんは、「両親が、僕が学校に行かなくなったことでよく喧嘩するようになったし、そういう声が聞こえてきて、でもちょっと待ってくれ、なんとかしようと思てんねんけど、どっちに足を踏み出していいかわからないみたいな」と当時の気持ちを語りました。

 「だから僕なんか、本当に奇跡的に、たまたませいじが、引っ張り出してくれたから。もし、せいじが居なければ、本当に同じように、僕(被害者の長男と)ほぼ同い年ですけれども、まだ部屋にいた可能性もぜんぜんありますし」と、兄のせいじさんの行動がなかったら、まだ出口が見つからないままだった可能性もあると振り返っています。


「(引きこもりが)100人いたら100人とも違う」

 引きこもりになったきっかけについては、「ひとつじゃなくていろんなことが重なって、僕は中学受験して、私立の中学に行ったんですけど、その学校の風習とかっていうのに馴染めなかったりとか、あとはまあ友だちもできなかったりとか、いろんなことが積み重なって」と説明。

 「僕はその14歳の時、閉じこもってテレビを見てた時に、こういう番組でいろんな大人たちがしゃべってましたけど、1つも当てはまってなかったです、自分には。その大人たちに『はあ? 何言うてんの?』と思ってたし、だから今僕の発言をそう思って見ている若い人たちもたくさんいると思いますし。だから、(引きこもり経験を語っても)自分の経験でしかない。本当に、当たり前のことですけど、100人いたら100人とも違うから」とコメント。

 「“こういう時にはこうしましょう”じゃあかんのやね。インフルエンザA型やからこの注射、B型やからこの注射というのとは違うから」と述べ、引きこもり問題はマニュアル化された対応では解決できないという考えを強調しました。


「引きこもってる方が犯罪を起こすわけじゃないから」

 また、千原ジュニアさんは、「ジュニアさんにとってのせいじさんのような、引っ張り出してくれる存在がいるかいないかによって、こういう事件が起こってくるこないに関わってくるというふうに思いますよね」という質問には、「うーん……」と考え込んで、「別に引きこもってる方が犯罪起こすわけじゃないから、そこは違うかなと」とコメント。

 番組では、千原ジュニアさんの考えを後押しするように、MCの国分太一さんが、「今回の事件とひきこもりというのはいっしょくたにしてはいけない問題だと思う」「そこは切り離して考えないといけない」とコメント。

 視聴者の不安に応える形で、番組自体は事件報道から中高年引きこもり問題という流れで構成されていましたが、番組ではひきこもり問題に詳しい、ひきこもりUX会議代表理事の林恭子さんも出演し、「(引きこもって蓄積した)ストレスのマグマが暴力につながっていくというのは特殊な例」と断言しました。

 また、林恭子さんは「ひきこもりだからではなくて、孤立していたということが問題」と指摘、「本人が誰よりも自分を責めている」から家族が就労を迫るなどして追い詰めないことや、家庭内だけで解決しようとせず、自治体や民間の相談窓口で相談するといった対応を説明。

 東京都が5月30日から「ひきこもりサポートネット訪問相談」の対象を、35歳以上の引きこもりまで拡大したことを紹介しました。

[工藤ひろえ]