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松田優作がスマホを使う!? 東映ツークン研究所が松田優作をデジタルヒューマンとして蘇らせたショートムービーを公開~松田美由紀が監修したデジタルヒューマン松田優作の初主演作

[2022/9/21 09:30]

 「コンテンツの未来をデザインする」というミッションのもと、企画・制作、研究開発を行なう東映株式会社の東映ツークン研究所は、新たな映像表現を目指してデジタルヒューマンの技術開発を行なっており、今回、2022年春に発表された松田優作さんをデジタルヒューマンで復活させるプロジェクトの第2弾として、ショートムービーが公開されました。女優・写真家 松田美由紀さん監修のもと、デジタルヒューマンとして現代に蘇った松田優作の初主演作となっています。

(c)東映ツークン研究所
Toei Zukun Lab|名優・松田優作がデジタルヒューマンとして映像に蘇る!

 東映ツークン研究所ではデジタルヒューマン専門チームを編成し、2019年からデジタルヒューマン研究開発プロジェクトを進めており、デジタルヒューマンショートムービーの主演には、かつて東映グループ会社のセントラルアーツに所属し、「最も危険な遊戯」「蘇る金狼」「探偵物語」「華の乱」などに出演、当時の映画界を牽引した松田優作さんが選ばれました。

 遺作となった「ブラック・レイン」ではハリウッドにも進出するなど、世界的にも知名度が高いトップスターの独特の雰囲気やオーラをデジタルヒューマンとして蘇えらせるため、顔の復元にはツークン研究所が運用するスキャンシステム「Light Stage」で取得した複数人の超高精細3DCGデータをもとに、機械学習で生成した顔モデルが利用されており、表情の動きにはトラッキング技術を使用し松田優作さんのボディダブルの表情を解析し、アニメーションがつけられています。

 また、声の復元に関してはAIによる音声復元およびAI音声ディレクション全般をゲーム開発から映像、メタバースコンテンツ開発などの制作を幅広く行なっているORENDA WORLDが担当、そして音声合成分野で有名な名古屋大学発の企業であるTARVOのAI音声変換技術「Suara」を使用して復元に挑んだとのことです。

 今回公開された映像内容としては、松田優作さんが夜のトンネル内を車で運転する姿、そして彼が触れたことのないはずの現代のスマートフォンを使っての通話姿、逆に昭和を感じさせるようなジッポーでの煙草に火をつける姿など情緒漂った映像になっています。

 一連の自然な仕草に往年の松田優作さんの姿が思い出され、まるで松田優作さんが現代に蘇った、もしくは自分が過去にタイムスリップした、そんな感覚をになるような映像で、最後には「YUSAKU MATSUDA」のクレジットで締めくくられたアーティスティックな映像となっています。

 そんな現代と過去が融合された映像の監修には松田優作さんのクリエイティブ全般を担う松田美由紀さんが務めています。

 今回制作を行なったデジタルヒューマン研究開発プロジェクトではこの技術をこれから先の映像作品の中に活かし、過去の偉人や大スターを現代のスクリーンの中に蘇らせるといった新たな映像体験を生み出していくとしています。さらに、エンターテインメント業界から飛び出して社会実装の観点から、AI技術と連携などをして街中での道案内や広告、または接客などのサービス業での活用など幅広い技術活用の可能性を追い求め社会の課題解決に挑んでいくとのことです。

 なお、東京藝術大学大学院映像研究科 岡本美津子教授と、今回の松田優作さんをデジタルヒューマンで復活させるプロジェクトのディレクター美濃一彦氏の対談記事も公開されています。

松田美由紀さんのコメント

(c)三宅英文

 青いライト、煙草の香り。俳優、松田優作の短編映画ができあがりました!亡くなって33年経った今、皆さんの想いで新作が作られた気持ちです。監修ではパソコンに向かって少しづつ、時間をかけて、優作の世界に入っていきました。

 形を追い求めるのではなく私の中の記憶、優作への想いを頼って一歩一歩近づいていく。圧倒的に強いオーラ。それだけを感じながら制作のお手伝いをしました。どんどん顔に魂が吹き込まれていくから不思議。ぜひ現代の優作に会ってみてね。

【プロフィール】
10月6日生まれ。
モデル活動を経て、1979年映画『金田一耕助の冒険』(大林宣彦監督)でスクリーンデビュー。2005年には初舞台となる「ドレッサー」にも挑戦し、以来、演技幅の広い女優として定評がある。主な出演作品に、ドラマ「探偵物語」(‘79)、「北の国から」(‘81)、「新・天までとどけ」シリーズ(‘99~’04) 、映画『2つ目の窓』(‘14/河瀬直美監督/第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品)、『ちはやふる上の句・下の句/ 結び』(‘16/‘18/小泉徳宏監督)、『見えない目撃者』(‘19/森淳一監督)等。現在、WOWOW×ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』が配信中。
写真家として、写真集「私の好きな孤独」(‘08)刊行、雑誌「GENROQ」(‘06~’13)では7年間グラビアページを担当した他、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」に女形の衣装をまとった早乙女太一さんのポートレート作品約20点を出展。また、映像監督として、早乙女太一主演『祈り人』(-ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2021『Discover Beauty プログラム』上映作品―)等がある。
2019年よりシャンソンやジャズを中心に本格的に歌手活動をスタート。10月8日(土)にはJZ Brat Sound of Tokyoにて『松田美由紀 CINEMATIC LIVE SHOW '22 ~音は月の下で波紋をつくり、空間をめぐる~』が開催される。

デジタルアート研究の視点から~東京藝術大学大学院映像研究科教授 岡本美津子氏のコメント

 人は微妙な顔の筋肉の動きで感情を読み取ろうとするのですが、この映像ではそれが自然に表現されており、デジタルヒューマンを見たという印象よりも普通のドラマの1シーンを見たというのが率直な感想でした。今回の映像は、デジタルヒューマンが1人の俳優として活躍できる可能性があることを提示した素晴らしい作品だと思いました。

 また、この技術を東映ツークン研究所の目的の一つでもある社会実装においても活用することで、現代社会に様々な可能性を提供してくれると期待しています。

【プロフィール】
東京藝術大学大学院映像研究科教授(アニメーション専攻)。同大学副学長(デジタル推進担当)。
映像プロデューサー(NHK『Eテレ0655 2355』等)

[古川 敦]