アニメ・マンガ

「弱虫ペダル」作者の渡辺航さん講演会~「弱虫ペダル」誕生秘話から、荒木飛呂彦さん・秋本治さんとの逸話も披露

[2015/8/28 08:00]

 いよいよ今日8月28日(金)、アニメ「劇場版 弱虫ペダル」が全国公開となります!

 劇場版の全国公開に先立って、8月9日にマンガ「弱虫ペダル」作者の渡辺 航(わたなべ わたる)さんの講演会が地元・長崎で開催されました。ここでは講演会の模様をレポートします。


渡辺 航さん。来場者に配布したカードを手に。


 会場の長崎県美術館では、開館10周年を記念して7月18日より「弱虫ペダル」とのコラボ企画をスタート。渡辺さんの講演会もコラボ企画の一環として開催されました。

 講演会のテーマは「『弱虫ペダル』~渡辺航先生のルーツを探る~」。渡辺さんは長崎県出身ですが、地元での講演会は初とのこと。会場には事前申し込みで当選したファンが集まり、熱心に聞き入っていました。


長崎県美術館。対岸には日本三大夜景を一望できる稲佐山があります。


 渡辺さんはまず、マンガを描いて生活することの大変さを語りました。印税が入ってくるのは、雑誌に連載されたマンガが単行本化されてから。原稿料については「週刊連載をしていたら、ほとんど月々のスタッフ代と光熱費と家賃で消えていきます」とのことで、あらためて印税の重要度がわかります。「そんな話をしたかったわけじゃないんですが(笑)」(渡辺さん)。


舞台裏を語りながら、読者にはそうした事情は取っ払って楽しんでほしいという渡辺さん。


 マンガを描くことの大変さについても、ネーム、原稿、ペン入れと、最低でも同じ絵を3回も描く必要があり、「ネームの直しとか下描きが気に入らないといった場合は、もっと描かなければなりません。マンガ家になっている人はこれをクリアしている人なので、読んでいて面白くないなと思っても、その裏側では大変な思いをしています」と舞台裏を明かしながらも、「マンガ自体は娯楽なので、そういう舞台裏の事情は取っ払って読んでほしいと思っているんです」と、読者には純粋に娯楽として楽しんでほしいとコメント。


担当編集者の後押しがなかったら「弱虫ペダル」連載はなかったかも? 大勢のファンを前に「描いてよかった」と語る渡辺さん。


 「弱虫ペダル」連載についても、連載が誕生した経緯を披露。「週刊少年チャンピオン」では、曽田正人さんの自転車マンガ「シャカリキ!」があったため躊躇していたところ、担当編集者からの後押しがあったといいます。「始めてみるとうまくマンガにフィードバックできました。“自転車に乗るのも楽しいし、マンガを描くのも楽しいね”という発見があったので、描いてよかったなと幸せに思います。」


「ツール・ド・夏休み」を図解する渡辺さん。


 第39回講談社漫画賞を受賞した話や、オフロードで行われる自転車競技「シクロクロス」のチームを結成した話、渡辺さんがブログで行程を報告している「ツール・ド・夏休み」の話など、講演内容は盛りだくさん。

 臨時に1カ月だけ荒木飛呂彦さんのところでアシスタントをした際に、「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物であるブローノ・ブチャラティの水玉模様を描いたことや、「こちら亀有区葛飾公園前派出所」の秋本 治さんが「弱虫ペダル」の単行本を全巻読んでいるだけでなく、舞台のDVDまで見ていたことなど、マンガ家同志の交流についても触れ、充実した講演会になりました。


来場者1人1人にカードを配布する渡辺さん。


 長崎県美術館では、「弱虫ペダル」とのコラボ企画を来年3月31日まで開催する予定です。7月から始まった「弱虫ペダルスタンプラリー」は来年3月31日までの実施。美術館の各所にあるスタンプを全種類集めるとオリジナルポストカードがもらえます。

 また、10月14日から10月29日までは、原画を精密かつ忠実に再現した「弱虫ペダル複製原画展示」が行われます。印刷されたマンガとはひと味違う、ペンの勢いまでが感じられる複製原画を間近に見るチャンスなので、弱ペダファンはお見逃しなく。

[真狩祐志]