ネットの話題

佐野研二郎さん、東京オリンピックのエンブレム取り下げについてコメントを発表

[2015/9/2 03:49]

 オリンピックのエンブレムが連日話題になっていましたが、9月1日(火)に東京五輪組織委員会が会見を開き、エンブレムの使用中止を発表しました。会見では、武藤敏郎事務総長がエンブレム選定は公募から仕切り直すという方針を明らかにしたことで、盗作疑惑騒動はいちおうの決着をみたことになります。

 会見はYouTubeなどで生中継され、テレビのニュースでも大きく報道されましたが、発表会にはエンブレムの審査員代表の永井一正さんや、エンブレムをデザインした佐野研二郎さんは出席せず、武藤敏郎事務総長が両者のコメントを紹介するにとどまりました。

 このため、ネットでは当事者である永井さんや佐野さんの話も聞きたいとの声が上がっていました。そうした声を受けてか、佐野さんは経営するデザイン事務所のサイトでコメントを発表しました。

 コメントで佐野さんは「このような国をあげての大変なイベントのシンボルとなるエンブレムのデザイン選考への参加は、デザイナーにとっては大舞台であって、疑いをかけられるような模倣や盗作は、原案に関しても、最終案に関しても、あってはならないし、絶対に許されないことと今でも思っております。模倣や盗作は断じてしてないことを,誓って申し上げます。」と改めてエンブレムのデザインで模倣や盗作はしていないことを言明。

 続いて、「しかしながら,エンブレムのデザイン以外の私の仕事において不手際があり、謝罪致しました。この件については、一切の責任は自分にあります。改めてご迷惑をかけてしまったアーティストや皆様に深くお詫びいたします。」と、サントリーのトートバッグデザインの件について改めてお詫びしています。

 ただし、エンブレム自体については模倣や盗作がなかったとしても、プレゼンテーションで使われた空港の写真が海外のブログから流用されたものという指摘の声がネットで上がっています。空港の写真では、写っている多数の人々の配置や姿勢も完全に一致することから、無断流用されたものと見て間違いないと思われます。勝手にブログの写真を使用された人は、Twitterで、写真利用についての連絡は一切なかったことを明らかにしています。

 佐野氏は、サントリーのトートバッグの件で謝罪した後は「一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、私の他の作品についても、あたかも全てが何かの模倣だと報じられ、話題となりさらには作ったこともないデザインにまで、佐野研二郎の盗作作品となって世に紹介されてしまう程の騒動に発展してしまいました。」と説明。

 現在は、自宅や実家、事務所にメディアの取材が昼夜・休日を問わず来ている状態で、会社のメールアドレスもインターネットで拡散された結果、さまざまなオンラインサービスに無断で登録されるなどのイタズラ被害も受けていると明かしています。さらに、家族の写真もネットに晒されるなどして「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況だと思うに至りました。」と、エンブレム取り下げを決断した理由を説明しています。

 佐野さんデザインのエンブレムが取り下げとなったことで騒ぎは収束の方向に向かうものと思われます。ただし、会見で引責問題について問われた武藤敏郎事務総長が引責処分はしない考えであることを示唆したことから、国立競技場建て替えに続いて、“誰も責任を取らない”組織委員会自体に対する批判の声も再び上がっています。

[工藤ひろえ]