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「くだんのはは」など小松左京の厳選ホラーをコミカライズ! 「小松左京の怖いはなし ホラーコミック短編集【合本版】」電子コミックで発売~小松左京の手による漫画6作品も収録

[2017/7/26 16:59]

 小松左京氏のホラー短編を、人気ホラー漫画家がコミカライズした「小松左京の怖いはなし ホラーコミック短編集【合本版】」がデジタルコミックとして7月26日(水)に発売されました。

 参考小売価格は500円(税別)で、Amazonなどの電子書籍ストアで購入できます。

「小松左京の怖いはなし ホラーコミック短編集【合本版】」

 発売元はソニー・デジタルエンタテインメント・サービスで、昨年夏にマイクロコンテンツとして「小松左京の怖い話 ホラーコミック短編集」を販売。今回、全5作品を収録した合本版として、小松氏の七回忌にあたる7月26日(水)にリリースしたもの。

 収録された5作品は、小松左京氏の自選恐怖小説集「霧が晴れた時」(角川ホラー文庫)から厳選された、「くだんのはは」「まめつま」など5作品。

 また今回、小松左京氏自身が描いたホラー漫画6作品を「おまけ漫画」として特別収録しています。

小松左京氏の描いた、ホラー風味の皮肉の効いた漫画は一コマ、三コマ、四コマと、形はいろいろ。雑誌等に載ったのか、それとも、ただ描いただけなのか、一切不明だそうです。

 「小松左京マガジン」の裏表紙などに単品で紹介されたことはありますが、6作品まとめての掲載は今回が初めて。

小松左京氏自身が描いたホラー漫画6作品を収録


「小松左京の怖いはなし ホラーコミック短編集【合本版】」収録作品紹介(敬称略)

 収録作は、小松左京のホラーの中でも最高傑作と評される「くだんのはは」のほか、「すぐそこ」、「骨」、「まめつま」、「霧が晴れた時」の5作品。

 原作を読んだ人も、未浩、呪みちる、御茶漬海苔、稲垣みさお、児嶋都という人気ホラー漫画家がどうコミカライズするのかを楽しめます。



「すぐそこ」未浩~1

 「すぐそこ」は1969年に「週刊朝日」に掲載された短編小説です。田舎の人は基本的に親切ですが、時間間隔や距離感が、ややのんびりしすぎに感じることがあります。

 知らない土地で迷子になり、訊ねた人から目的地が「すぐそこ」との返事をもらえれば嬉しいものです。けれど、親切に聞こえるその言葉が、恐るべき迷宮の入り口へ導くキーワードだとしたら…。いつか、自分にも起こるのではと思わせる、リアルなホラー作品。

<作者紹介:未浩>
 1990 年、短編漫画「脇道」「消える」でデビュー。ホラー漫画誌で多数執筆を行う一方、イラトレーター不死木摩可(ふしぎまか)としても活躍。不死木摩可名義のTwitter ではオリジナル奇怪小説「ふしぎの摩可」を公開中。

「骨」呪みちる

 「骨」は1972年に、「小説新潮」に掲載された短編小説です。

 井戸を作ろうと掘り始めた穴から次々と現れる骨。何かにとりつかれたように掘り進むうちに、たどり着く恐るべき真実とは?

 小松左京が得意とする遥かな時の流れというテーマを、ホラー短編に凝縮した不条理感あふれる作品です。

<作者紹介:呪みちる>
 ギャグ漫画家として別名義でのデビュー後、1998年の「時計屋敷の少女」でホラー漫画家に転向。以後、雑誌を中心に短編作品を数多く発表。それらの作品を集めた「青空の悪魔円盤 呪みちる作品集」「ライオンの首 呪みちる作品集1996-2012」ほか著作も多数。

「まめつま」御茶漬海苔

「まめつま」は1970 年に「小説新潮」に掲載された短編小説で、小松左京自身が母親から聞かされた「まめつま」と言う妖怪を題材にしたホラー小説です。

 小松左京の実家では、幼児が夜泣きすると米をまく風習があり、子供にとりついて脅かす魔物を払うおまじないだったといわれています。小松左京の最初の子供が生まれ、夜泣きをした際に、妻は姑に教わったとおりに、寝ている子供の頭のまわりに、米をまいたと語っています。

 この風習をモチーフに、幼子を守ろうとし、次第に追いつめられてゆく若い母親の恐怖を描いています。

<作者紹介:御茶漬海苔>

 1984 年、「精霊島」でデビュー。独特の作風で多数のホラー漫画を執筆するほか、自身作品の実写映画を監督する等、活動は多岐にわたる。著書に「惨劇館」「魔夜子ちゃん」ほか多数。現在はトークイベントへの出演も多く、カルト的な人気を誇る。

「霧が晴れた時」稲垣みさお

 「霧が晴れた時」は1971 年「別冊小説新潮」に掲載された短編小説です。

 楽しいはずの家族での登山、霧が立ち込めることによって迫り来る恐怖、果たして霧が晴れた時には…。

 海難史上最大の謎とされるマリーセレスト号事件をモチーフに、自分をとりまく世界が静かに変化してゆく恐怖を描いています。物語は、小松左京が住んでいた大阪北部のある街がモデルとなっています。

<作者紹介:稲垣みさお>
 1994 年、『復讐』でデビュー。その後もホラー漫画誌で数多くの短編作品を執筆。1999 年には鈴木光司原作の話題作「リング」をコミカライズ。ホラー漫画以外の著書には、鬱病を題材にしたエッセイ作品「夫婦で欝るんです―それでも育児は可能です!」がある。

「くだんのはは」児嶋都

 「くだんのはは」は、1968年に「話の特集」で発表されました。戦後の恐怖小説の中でも、必ずベストの一つにあげられる、小松左京の最も恐ろしいホラーとされる作品です。
 戦争末期のつらい日々を過ごす、小松左京の分身のような旧制中学の生徒である主人公の語りで、超自然的で恐ろしい「くだん」に纏わる、大きな渦のなかに吸い込まれるような、逃れがたい物語が展開されます。

 恐ろしい物語の代表として女優の白石加代子さん、俳優の橋爪功さんらの朗読劇でも取り上げられています。1970年、「少年マガジン」において、石ノ森章太郎により漫画化。2015年に萩原玲二により新たにコミック化され、「新耳袋アトモス」(ホーム社)に掲載されました。

 今回のデジタルコミックは、コミック化としては3度目、デジタルコミックとしては初の試み。

<作者紹介:児嶋都>
 1990年デビュー。ホラー・怪奇漫画家&イラストレーターとして、 漫画執筆の枠を飛び越え企画展のプロデュースや個展活動を精力的に行う。映画監督の山本晋也氏の娘としても有名。代表作に「こども地獄」や、綾辻行人とコンビを組んだ「眼球奇譚」「緋色の囁き」がある。


[工藤ひろえ]