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どんな企業が「ブラック企業」なのか? 残業不払いや安い給与など、いまどきの学生は報酬に対してシビア! 有休取得が年間10日を切る企業もアウト?

[2017/11/27 18:50]

 11月27日(月)、恒例となった「ブラック企業大賞」のノミネート企業が発表されました。今年は第6回目で、2016年の第5回「ブラック企業大賞」は電通が受賞。

 今年のノミネート企業は、ゼリア新薬工業、いなげや、パナソニック、新潟市民病院、NHK、引越社グループ、大成建設・三信建設、大和ハウス工業、ヤマト運輸の9候補。ノミネートされた企業は、過労による自殺や突然死、違法な時間外労働、賃金不払いなどが報道されています。

 大賞選出はWeb投票によって行い、投票ページは11月27日(月)午後17時にオープン。12月22日(金)まで投票を受け付け、12月23日(土・祝)に大賞が発表されます。

どんな企業が「ブラック企業」なのか~いまどきの学生は報酬に対してシビア

 優秀な人材を採用したい企業にとって「ブラック企業」の烙印を押されるのは避けたいところ。過労死を巡る報道や人手不足感を背景に、元日の休業を発表したファミレス、配送の時間指定枠を見直した運送会社など、企業側でも働き手の目線に立った改革への取り組みが増えてきました。

 ただし、どういった企業を“ブラック企業”と考えるのかは個人の感じ方によるところもあります。人材採用支援サービスを手がける株式会社ディスコは、学生と企業の採用担当者を対象に「ブラック企業についての考え」に関するアンケートを実施、結果を発表しました。

 調査対象は、企業が1,362社、学生が1,225人。

 ブラック企業だと思う条件を聞いたところ、「残業代が支払われない」が企業側・学生とも8割弱でトップ。

 学生のトップ5は以下の通り。

1 残業代が支払われない
2 セクハラ・パワハラがある
3 労働条件が過酷である
3 成果を出さないと精神的に追い込まれる
5 給与金額が低すぎる

 企業側もトップ5は学生とほぼ同じですが、「募集条件と実働が著しく異なる」が3位に入っていて、企業側は募集条件と実態が大きく違ってしまうことがないように、という点を気にしているようです。

 全体に学生よりも企業側がそれぞれの条件をブラックだと思う率は低くなっていますが、とくにギャップが大きいのが「給与金額が低すぎる」「残業が多い」「有給休暇が取りづらい風土がある」の3つで、学生と企業側で20ポイント以上の開きがあります。

 とくに、「給与金額が低すぎる」については、学生(62.9%)は企業(34.2%)の2倍以上に上っています。「残業代が支払われない」が最も多くなっていることとあわせて、学生は報酬に対してシビアに考えていて、不当に安い賃金に対する警戒感が強いことがわかります。


「ブラック企業」になると思う目安~有給休暇取得が年間10日を切る企業はアウト?

 調査では、具体的にどの程度であれば「ブラック企業」になると思うのか、「離職率」「残業時間」「有給取得日数」について質問。

 大卒新卒者の3年の離職率では、学生では「3割超」えたらブラック企業と考える人が32.1%で最も多く、企業の採用担当者では「5割超」が
52.0%と突出しています。ここでも、学生の方が企業より離職率を厳しい目で見ていることがわかります。


 「1 カ月の残業時間」が何時間を超えたらブラック企業になると思うかという質問では、採用担当者は「40~60 時間未満」と「100~120 時間未満」が 24.7%で最多に。過労死ラインの目安となる残業時間は月80時間とされていますが、このラインを挟んで二分している形です。

 一方、学生では「40~60時間未満」が最多で、27.2%。過労死ライン(80時間)を下回る時間数を回答した割合は学生で計59.4%と約6割を占めます

 企業では、過労死ラインを下回る時間数を回答した人は47.1%で、学生の方が採用担当者より短い残業時間を目安としていることがわかりました。

 「年間の有給休暇取得日数」について目安を聞いたところ、学生と採用担当者はともに「5~10日未満」をブラック企業判定の基準として上げた人が最も多くなっています。

 厚生労働省の調査によると、実際の年次有給取得日数は労働者の平均で8.8日(平成 28 年就労条件総合調査)。平均の約9日では、学生の約8割に「ブラック」とみなされてしまうことになります。また、10~15日未満では、採用担当者ではブラックと見る人は13.8%ですが、学生では30.2%と3割超に上ります。

 ちなみに、企業から労働者に付与される年次有給休暇は勤続半年で10日。以後は勤続年数に応じて増え、勤続6.5年以上で最大の20日となります。年次有給休暇とは別に、有給の夏季休暇が5日ていど取得できる企業も多いため、そうした企業では入社初年度で15日の有給休暇が取得できることになります。

 「有給休暇を取りづらい風土がある」企業をブラック認定する学生が49.5%と約半数に上ることとあわせて、職場の空気としても有給休暇を取るのは当たり前という企業を学生は望んでいるよう。

 政府も、多様なワークスタイルが選べることで働ける人を増やし、労働力を維持するため、2020年をめどに有給休暇の消化率を70%まで引き上げることを指標としています。

 有給休暇を取りたがる若者を「わがまま」「甘え」と見るような企業があるとしたら、人口減が進む中、今後は人材確保に苦労することになるかもしれません。

[工藤ひろえ]