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来年の入社試験に出るかも!? 三省堂が、辞書に載るかもしれない今年の新語を大発表!「—ペイ」「にわか」「サブスク」など~辞書のプロによる解説付き!

[2019/12/4 16:28]

 多数の辞書を編纂・発売している株式会社三省堂は、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2019』」選考発表会を実施。2019年を代表・象徴する新語ベスト10を発表しました。

特別ゲストに鴻上尚史さんを迎えて行われた選考発表会の様子

新語の選定にあたっては一般公募を行い、応募総数は延べ2,017通(異なり837語)となりました。これらの投稿などをもとに、辞書を編む専門家である選考委員が一語一語厳正に審査し、「今年の新語2019」ベスト10を選定しました。


大賞は“造語成分”の「—ペイ」

 大賞には、「PayPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」「Google Pay」「Apple Pay」など乱立するスマホ決済サービスで使われる「—ペイ」が選ばれました。

 スマホ決済サービスの名前でなぜか申し合わせたように使われる「—ペイ」。こうしたことばの要素は「造語成分(語を構成する要素)」と呼ばれます。

 消費税増税を機に、政府もキャッシュレス決済の普及を図っています。「消費者の決済行動に大きな変化を及ぼすという意味で2019年を代表するにふさわしいことば」として対象に選出されました。


2019年を物語るベスト10はこちら!

 2位の「にわか」は、もともと、「にわかに雨が降ってきた」のような副詞用法や、「にわか勉強」のような造語成分の用法がありましたが、最近は「にわか」だけで「にわかファン」の意味を表すようになりました。従来のけなして使う用法から、初心者を歓迎する意味合いに変化しつつあります。

 3位の「あおり運転」、4位の「反社」、6位の「電凸」、そして7位の「カスハラ」と、今年は攻撃的な行為や、社会の負の側面が現れたことばが並ぶ結果となりました。

 選評では「決して愉快なことばではありませんが、今後も使われ続けると予想され、避けて通ることはできません」と指摘。たしかに、いずれも簡単に収束しそうにもない社会問題を象徴しえちます。

 5位の「サブスク」は、サブスクリプションサービスの略で、定額で使い放題のサービスの総称です。当初は電子ブックの読み放題や動画の見放題といったデジタルの世界のサービスに使われていましたが、近年では居酒屋のサブスクや高級バッグのサブスクなど、多方面に浸透して身近なことばになりました。

 8位の「垂直避難」は、近年の気候変動で水害が増え、今後も使われていく可能性が高いことからランクイン。

 10位の「ASMR」は、「Autonomous Sensory Meridian Response」の略。脳内幸福感を引き起こす音を総称した、今回のランキングでは唯一のアルファベット語です。YouTubeで「ASMR」と検索すると、ものを食べる音、耳かきの音、手をこする音など多数の動画が上がっています。なお、人により心地よいと思う音が違うので、自分にとって“気持ちいい音”とは限りません。

 一方で、今回最も投稿数の多かったのが「タピる」ですが、いつまでブームが続くか判断できず選外に。

 また、「ワンチーム」は、今後「一致団結」に代わって定着する可能性はあるものの、まだ流行語的な色合いが強く選外となりました。2番目に投稿数が多かった新元号「令和」は、この先も長く使われることは確実で、特別賞を受賞しました。


辞書の編者が執筆した、入賞したことばの解説

 ベスト10に選出されたことばには、実際の編者が腕をふるって国語辞典としての言葉の解説(語釈)を書いています。

 シャープな語釈でことばの本質をとらえる「新明解国語辞典」、シンプルな語釈で要するに何かがわかる「三省堂国語辞典」、高校生の自習を強力に支援する「三省堂現代新国語辞典」、いまの日本語を映し出す[国語]+[百科]辞典の「大辞林」。それぞれの編集方針で異なる語釈の切り口と面白さをお楽しみくださいとのこと。

 以下は、発表された解説をそのまま(コピペで)ご紹介します。

大賞「—ペイ」

ペイ (造語)〔←payment〕スマートフォンにインストールしたアプリを使い、キャッシュレスで支払いを行うサービス。経済産業省が進めようとしているキャッシュレス決済に伴い、さまざまな支払方法が広まっている。キャッシュバックキャンペーンやポイント還元、軽減税率などを有利にする方法として用いられている。〔消費税の一〇パーセントへの引き上げに際し、現金を使用しないことで、増税の実感を少しでも減らすための方法として広めた仕組みとも考えられる〕
ーー「新明解国語辞典」編集部執筆

ペイ〔pay〕[一] (名)報酬(ホウシュウ)。賃金。「―は八千円だ」[二](名・自他サ)①割に あうこと。もうかること。「―しない仕事」②しはらうこと。[三](造語)〔—ペイ〕スマートフォン決済の名前に使う ことば。
ーー「三省堂国語辞典」飯間浩明先生執筆

ペイ〈造語〉[←payment]「ペイメント」の略。現金を用いない、スマートフォンなどによる電子マネー決済。[「…ペイ」のように、固有の電子決済名として用いられることが多い]
ーー「三省堂現代新国語辞典」小野正弘先生執筆

ペイ [1]〔ペイメントの略〕他の語に付いて、電子決済のサービス名称を作る語。「ペイ―」「グーグル―」〔特に、近年広がったモバイル決済サービスで多く使われる〕
ーー「大辞林」編集部執筆

2位「にわか」

にわか[(×俄か)]ニハカ[一](形動ダ)急に そう〈なる/する〉ようす。〔少し かたい言い方〕「―に空が くもってきた・―な空腹・―雨・―雪・―づくり・―じたて」[二](造語)〔にわか—〕その時だけの。かりそめの。「―勉強・―サッカーファン」[三](名)その時だけ関心を持つ人。関心を持って間もない人。
ーー「三省堂国語辞典」飯間浩明先生執筆

3位「あおり運転」

あおり うんてん[4]アフリ─【〈煽り運転】道路を走行する自動車や自動二輪車などに対し、後方から高速で迫って異常接近したり 前方に急に割り込んだり、また、パッシングするなどして、相手を威嚇し恐怖を与えて、重大な事故を引き起こしかねない悪質・危険な行為のこと。
ーー「新明解国語辞典」編集部執筆

4位「反社」

はん しゃ[反社](名)①〔←反社会的勢力〕暴力団など、暴力や詐欺(サギ)といった方法で利益を得ようとする勢力。②←反社会。「―(的)勢力」▽二〇一〇年代に広まった ことば。
ーー「三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

5位「サブスク」

サブスク〈名〉[←subscription]会員となってある期間分の定額料金を支払えば、その期間内は提供されている製品やサービスをいくら使っても、追加課金がないというシステム。定額制。「―にない楽曲」[音楽配信や動画配信などのサービスをはじめとして、さまざまな分野に広がりつつある。subscriptionのもとの意味は「会費」]
ーー「三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生執筆

6位「電凸」

でん とつ[電:凸](名・自他サ)〔←電話で突撃(トツゲキ)〕団体などに電話して、暴力的に非難したり問いつめたり(した結果をネット上に公開)する迷惑行為(メイワクコウイ)。〔二十一世紀になって広まった ことば〕
ーー「三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

7位「カスハラ」

カス ハラ [0] 〔カスタマー-ハラスメントの略〕客が接客担当者などに対し、悪質で理不尽な要求や過度のクレームなどで、長時間の苦情の言い立て、暴言や脅迫、謝罪の強要、暴力行為などの迷惑行為を行うこと。
ーー「大辞林』編集部執筆

8位「垂直避難」

すいちょく ひなん [5] 【垂直避難】災害時に垂直方向に移動する避難方法。洪水や津波の際に自宅や近隣の建物内で上階に移動することや、地震や火災の際にビルの高層階から地上に移動することなど。離れた場所にある避難所への移動が困難な場合に、安全の確保のために行う。〔離れた場所に移動する「水平避難」に対していう〕
ーー「大辞林』編集部執筆

9位「置き配」

おきはい【置き配】〈名〉宅配する際に、品物を対面して渡すのではなく、指定された場所に置くことで配達すること。「―で玄関前を指定する」[再配達による時間や労力の無駄を防ぐために始められた]
ーー「三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生執筆

10位「ASMR」

エー エス エム アール[7]【ASMR】〔←Autonomous Sensory Meridian Response=自律感覚絶頂反応〕 聴覚や視覚への刺激によって、脳に快感を覚える反応・感覚。科学的根拠には乏しいが、多くはその人が経験し気持ちよいと感じられた音を耳にすることによって、気持がやすらいだり 快感をえられたり、また、痛みがやわらいだりするとされる。主にインターネット動画を通してひろまり、タイピング音や咀嚼(ソシヤク)音など様々なものがある。〔聞きようによっては雑音にしか聞こえないものも多い〕
ーー「新明解国語辞典』編集部執筆

[工藤ひろえ]