「孤独のグルメ」原作の久住昌之さんが谷口ジローさんをFacebookで追悼~「何度も何度も読まれるに耐える絵を、漫画を、描いた」
「犬を飼う」、「『坊っちゃん』の時代」や「孤独のグルメ」を描いた漫画家 谷口ジローさんが2月11日に死去したことを受けて、「孤独のグルメ」の原作を担当した漫画家 久住昌之さんが、自身のFacebookで13日、谷口ジローさんとの出会いや思い出、心境をつづり追悼しています。
久住さんが連絡が受けたときは、「いつかこの日が来てしまうことを覚悟していたので、訃報を受けた時のショックは、それほど大きくはなかった。でもその電話を切ってしばらく普通に仕事していたら、お腹の方から冷たくて重いような気持ちが広がってきた」と心情を語っています。
久住さんが谷口さんと最後に会ったのは、「去年の4月28日。『孤独のグルメ2』の出版打ち上げだった。病み上がりで、お酒も食べ物もほとんど手をつけなかったけど、みんなと一緒にいるのが楽しそうだった」とのこと。
久住さんが谷口さんと最初に会ったのは「もうかれこれ23年も前だ。もちろん『孤独のグルメ』の連載の打ち合わせだ。たった8pにアシスタント3人も使って一週間もかけた。アシスタント代を払ったら原稿料では完全な赤字だ。そういう人だった」と谷口さんの人柄を振り返り、谷口さんは「この作品は言葉も少なく、料理の説明もほとんどない。だから、読者に主人公の気持ちを感じさせるには、主人公が見たものを見えたように描き込まなければならないんです」と語ったといいます。
単行本「孤独のグルメ」を出した当初はそれほど売れなかったものの、文庫化されてからじわじわ売れ出し、つぎつぎに翻訳され、連載から実に十数年のちにドラマ化。久住さんは、「谷口さんが、時と場所を超え、何度も何度も読まれるに耐える絵を、漫画を、描いたからだ」と谷口さんの仕事の凄みを語っています。
久住さんが谷口さんに「本当に毎回、驚かされます」と言うと、「こっちは描いててお腹が空いちゃって困るよ」と笑っていたとのこと。また、単行本化するとき、一切描き直しや修正をせず、「そんな時間があったら、次のマンガを描くよ」と言っていたそうです。
谷口さんが亡くなったと連絡を受けた夜に久住さんは、去年、世界同時発売された、初めての画集「谷口ジロー画集 jiro taniguchi」をゆっくりゆっくり眺め、「どれも素晴らしく、そのどのページの細部にも、谷口さんの息遣いや、強さ、やさしさ、真面目さ、おおらかさ、つまり魂が満ち溢れている。谷口さんがそこに生きていた」と作品の中に生きていることを実感したとのこと。
「孤独のグルメ2」には、実は描かれなかった最後の1話が残されているとのことで、「それがボクへの、そういうメッセージのようにも思える。谷口さん、本当にお疲れさま。そして、本当にありがとうございます。はるか遠方で見守っていてください」と追悼しています。