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あなたは正しく読めてる!? “ぜったいに ばなれい”広告で、どら焼きの老舗「中尾清月堂」が過去最高の売上~看板商品のどら焼き「清月」を大幅改良

[2018/7/30 20:02]

 どら焼きの老舗「中尾清月堂」が30日、3月に発表した不思議な広告で、キャンペーンが大盛況となり、富山県内のみの販売にも関わらず、10日間で過去最高の59,200個を売り上げたと発表しました。

限定どら焼きセットは完売になる店鋪続出

 2018年3月、明治3年創業、富山県内に5店舗を展開する老舗の和菓子屋「中尾清月堂」が、看板商品であるどら焼き「清月」を大幅改良。この改良のお知らせを、文字の順番を入れ替えても正しく読めてしまう「タイポグリセミア(Typoglycemia)現象」を用いた文章で広告し、どこが変わったのかをクイズで答えるリニューアルキャンペーンを開催しました。

新聞の折り込み冊子に掲載された実際の広告

 大幅なリニューアルをしたにも関わらず、絶対にばれないと銘打った広告は、SNSとクチコミを中心に話題となり、キャンペーンには3,000通を越える応募があったとのこと。さらに、この広告が先日行なわれたデザインの審査会「富山ADC賞」も受賞しました。

 タイポグリセミア現象とは、文章中の単語の文字を入れ替えても、その文章を問題なく読むことができる現象のことで、例えば「おはよう」の“は”と“よ”を入れ替えて「お よ は う」と並べても、「おはよう」と読めてしまいます。

 この現象については1976年ごろから様々な研究者による実験的な文章が存在していますが、科学的には証明されておらず、タイポグリセミアという呼び名もあくまで俗称で、日本国内では、2009年に掲示板サイト「2ちゃんねる」で、この現象を用いた文章が書き込みされたことにより、インターネット上を中心に広く知られることになりました。

 今回のキャンペーンは「問題文」が話題を呼びましたが、出題されたクイズ「どら焼きのどこが変わったか」の解答は以下の通りです。

【どら焼きのどこが変わったか】
1.焼き方が変わった
2.卵が変わった
3.餡が変わった
4.包装方法が変わった
5.4代目から6代目に変わった

 同社が非常に難問として出題したクイズでしたが、「生地も餡も変わった気がする…難しい!(40代女性)」、「餡が変わった!豆の粒が少し小さく赤みがかり、歯ごたえを残しつつ汁気多めの餡になったような気がしました。このようにおいしいものを食べさせてくださる御社の職人さんのご努力に改めて感謝申し上げます。(40代女性)」など正解が多く寄せられたそうです。

アンサー広告では、皆様の意見に社員一同で回答

 今回の広告デザインを担当したのは羽田純氏(ROLE/)。タイポグリセミアを使用した理由については、「どら焼きといえば、中尾清月堂というほど、どら焼き一筋でやってきた同社。社名を冠した商品の大幅リニューアルは、実は社運をかけた一大事業でした。しかし、実際はリニューアル後も変わらずみなさまに愛されている様子を見て、『絶対にバレない』技術の高さを実感し、それを逆手に取った広告にしようと思いました」と説明しています。

羽田純氏(ROLE/)

 また、「語順を変える単純な仕掛けですが、じっくり文章を読ますことができ、結果、たくさんの方にどら焼きを味わってもらう機会になりました。また、富山県の優れたデザインを集めた富山ADC審査会では、広告の切り口と中尾清月堂さんの試みが評価され、富山ADC賞を受賞することが出来ました」と語っています。

[古川 敦]