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泉佐野市が総務大臣のふるさと納税「100億円還元」批判に反論 「総務省はふるさと納税の成長は望んでいないのでは?」と千代松大耕市長

[2019/2/12 16:22]

 2019年2月1日から、ふるさと納税を申し込んだ人全員にAmazonギフト券をプレゼントする「『100億円還元』閉店キャンペーン!」を実施している泉佐野市が12日、2月8日の石田真敏総務大臣が、ふるさと納税に関して泉佐野市に言及し、2月12日には泉佐野市をふるさと納税制度から外す考えを示唆したという報道に、千代松大耕市長のコメントを発表しました。

 総務大臣が「自分のところだけが良ければ他の自治体への影響は関係がないという身勝手な考え」と批判していることに対し、千代松大耕市長は「他の自治体の事情を斟酌しながら、ふるさと納税制度を運用している自治体は存在しないと思う」と反論。

 さらに、「総務大臣は自治体は総務省の意向や考えに異など唱えず、黙って従っていればよい。総務省に従う自治体のことを考慮しない自治体は身勝手だと言っているかのようだ」と、非難しています。

 また、千代松大耕市長は現状について「ふるさと納税制度は一極集中する首都圏と地方の税収格差を埋めるべく創設された制度であり、それこそが『本来の趣旨』であると認識し、いままさに制度がつくられた『趣旨』どおりの状況になってきており、各自治体がアイデアを凝らしつつ寄附獲得の努力をしていくことは地方自治の観点から大きな意義があると考えている」としています。

 また、泉佐野市だけが寄附額が増えればよいなどとは、決して考えておらず、「ふるさと納税に力を入れたくても体力がない地方自治体には、これまでも喜んでノウハウや経験を伝え、実際に寄附額を増やした自治体もあり、今後もできる範囲で協力していきたいと考えている」とのこと。

 今回のキャンペーンについても、「さのちょく」のように自治体がコスト抑制できる特設サイトの認知が広がれば、今後のふるさと納税に新たな展開がもたらせるのではないかと考えているとし、「そうした現状を総務大臣はどこまで認識して“身勝手”といっているのか、このような表現をされたことは、甚だ残念でなりません」と反論しています。

 千代松大耕市長は、「総務省は、ふるさと納税の成長は望んでいないのでしょうか? 法制化への動き、また総務大臣のコメントを拝見していると、ふるさと納税、つまり首都圏と地方の税収格差解消にブレーキを掛けようとしているように思われてなりません」と総務省のふるさと納税への取り組み自体に疑問を呈しています。






【総務大臣の発言に関する千代松大耕市長のコメント全文】

総務大臣はコメントの中で、「自分のところだけが良ければ他の自治体への影響は関係がないという身勝手な考え」と、本市を批判されていますが、他の自治体の事情を斟酌しながら、ふるさと納税制度を運用している自治体は存在しないと思います。

総務大臣のお言葉は、「自治体は総務省の意向や考えに異など唱えず、黙って従っていればよい。総務省に従う自治体のことを考慮しない自治体は身勝手だ」と仰っているかのようです。

ふるさと納税制度は一極集中する首都圏と疲弊する地方の税収格差を埋めるべく創設された制度であり、それこそが「本来の趣旨」であると本市は認識しています。いままさに制度がつくられた「趣旨」どおりの状況になってきており、各自治体がアイデアを凝らしつつ寄附獲得の努力をしていくことは地方自治の観点から大きな意義があると考えています。

本市は、本市だけが寄附額が増えればよいなどとは、決して考えておりません。

ふるさと納税に力を入れたくても体力がない地方自治体には、これまで本市は喜んでノウハウや経験をお伝えしてきており、実際に寄附額を増やされた自治体もあります。今後もできる範囲で協力していきたいと考えています。

現在本市が行っているキャンペーンについても、「さのちょく」のように自治体がコスト抑制できる特設サイトの認知が広がれば、今後のふるさと納税に新たな展開がもたらせるのではないかと考えております。

そうした現状を総務大臣はどこまで認識されて「身勝手」と仰っているのでしょうか。このような表現をされたことは、本市としては甚だ残念でなりません。

これまで再三お伝えさせていただいていますが、総務省が打ち出している返礼品の規制に対して、本市は疑問を呈しております。

昨年秋には、公文書として本市の意見を総務省に提出していますが、未だにこれといった反応もされておりませんし、少なくとも本市が認識している範囲では、自治体と意見交換されたり、公の場で議論されているわけでもありません。総務省から各自治体に対して返礼品の地場産基準に関する現状調査は行われていますが、これはあくまでも地場産品の規制ありきで実施されているもので、一方的な見解を押し付けていることに変わりはなく、これだけでは自治体の意見や想いを充分に汲み取ることができないのは明白です。

ふるさと納税制度を担っている肝心の地方自治体の意見も聞かず、一方的な見解でつくった条件を押し付け、強引に地方を抑えつけようとしている「身勝手」さを示しているのは総務省の方ではないでしょうか。

地方創生は地方分権が守られてこそ成し得るもので、 なりふり構わず強引に地方をコントロールしようという総務省のやり方は、ふるさと納税以前に地方創生の趣旨に反しているものと考えます。


さらに総務大臣は「このような考えがまかり通れば、社会的にも、教育的にも、悪影響が大きい」とご発言されています。

「多くの自治体が財源確保に苦しんでいる」ことを認識しながら、その自治体としっかりとコミュニケーションせず、きちんと開かれた場で議論することもなく、一方的に決めた条件を押し付け、意に沿わない自治体は悪だと公言することが、果たして「社会的にも、教育的にも、」肯定されることなのでしょうか。

改めて申し上げますが、本市はふるさと納税制度のルールの中で、5年以上にわたって、知恵を絞り、努力を重ねて、施策を行ってきました。

これまで訴え続けてきたことですが、ふるさと納税は本来、各自治体がそれぞれの考え方や価値観・実態に応じてアイデアを出しながら切磋琢磨していくべきであり、国がやみくもに規制すべきではないと考えています。

これまでふるさと納税制度によって本市にご寄付をいただいた方の数は、累計でおよそ300万人に上り、寄附をいただいた方からは、本市のふるさと納税に対する見解・姿勢を強く支持していただくお声もたくさん頂戴しております。総務大臣のご発言は、本市ばかりでなく、これら寄付者の皆さまをも批判されていることになるのではないでしょうか。

もちろん本市も、現在のふるさと納税制度が完璧であるとは思っておらず、改善しなければならない点もあると認識しています。

しかし、制度の改正やルールの変更を行うのであれば、広く社会の意見を求め、少なくともふるさと納税が財源に多大な影響を及ぼす地方自治体の声を聞き、充分に論議を行ったうえで取り組むべきであろうと考えます。

総務省が示している返礼品規制が法制化されれば、本市の場合、相当数の地元の民間事業者が排除されてしまうことになり、その救済策の一つが、本市が現在行っているキャンペーンです。返礼品はあくまでも地元業者から仕入れたもので、市域の経済を活性化させており、その点においても「趣旨に反している」などと批判される謂れはないと考えます。

さらに申し上げれば、このキャンペーンは本市の特設サイトのみで行っており、ポータルサイトを介さないため、ポータルサイト業者に支払う手数料が発生せず、その分を寄附者に還元するものです。

総務省は、ふるさと納税の成長は望んでいないのでしょうか?

法制化への動き、また総務大臣のコメントを拝見していると、ふるさと納税、つまり首都圏と地方の税収格差解消にブレーキを掛けようとしているように思われてなりません。

[古川 敦]