西友をトライアルが3,800億円で買収 連結売上高1兆円超の小売グループが誕生
投資会社のKKRと米国の小売最大手Walmart Inc.(ウォルマート)が5日、両社が保有する国内大手スーパーマーケットチェーン株式会社西友の株式を、九州を中心にディスカウントストア業態の流通小売事業を展開する株式会社トライアルホールディングスへ譲渡すべく株式譲渡契約を締結したと発表しました。
トライアルホールディングスの所得株式数は9,912万2,400株で、所得価格は西友普通株式が3,800億円(概算)、アドバイザリーボード費用等が26億円(概算)、合計3,826億円(概算)。
トライアルでは、今回の西友の完全子会社化により、同社グループの基盤である九州に加えて人口集積地である関東エリア、中部エリア及び関西エリアでの事業基盤確立を迅速且つ効率的に実現することが可能となり、連結売上高1兆円超の小売グループが誕生するとしています。
なお、西友とトライアルグループの店舗は地域的に重複が少なく、商圏のカニバリゼーションによる退店などといったディスシナジーについては認識していないとのこと。また、「みなさまのお墨付き」、「食の幸」をはじめとした西友のオリジナル商品及びプロセスセンターやセントラルキッチン等の製造拠点を獲得することで、トライアルグループ全体の「食」の強化と生産・物流の最適化にも貢献が期待できるとしています。また、西友が展開するEC事業も当社のEC事業が、さらなる飛躍をする上でのシナジーを期待しているとのことです。
リテールAI事業では、メーカーとのデータ連携による流通業界の「ムダ・ムラ・ムリ」の解消や、トライアルグループが自社開発するタブレット決済機能付きのレジカード「Skip Cart」の導入によるお買い物体験の向上、リテールメディアの収益化を重点施策としているとしています。
KKRは、2021年にウォルマートより西友株式の65%、さらに2023年には楽天グループ株式会社より追加で20%の株式を取得し、西友株式の合計85%(議決権ベース)を保有する株主となっていました。今回の株式譲渡で、ウォルマートもその保有する15%の株式をトライアル社に譲渡するとのことです。
KKRアジア副代表兼株式会社 KKRジャパン代表取締役社長である平野博文氏は、「KKRでは、ウォルマートと楽天とのパートナーシップにより、西友への出資を通じて達成してきたこと、またそれにより西友のお客様と投資家の皆様にお届けできた成果を非常に誇らしく思っております。西友における変革は、日本の象徴的な企業ブランドのポテンシャルを、日本に対する深い理解と様々なノウハウを持つ当社のようなグローバルな投資会社が最大限に引き出すことができた非常に良い事例であるとみています。当社は西友がこれまでの成果を基盤にさらなる成長が実現できると確信しています。そして、これからは西友とトライアル社両社で新たな発展を遂げていくことを期待しています」とコメントしています。
西友の代表取締役社長である大久保恒夫氏は、「長きに渡り西友の成功に向けた多大な支援を継続してくださった株主であるKKRとウォルマート両社に対してまずは感謝申し上げます。この数年間、商品力・販売力を強化することで価値を創造し、それにより創出された利益を教育、IT等の前向きな投資に回し、更に価値を創造するという価値創造サイクルの実現に注力してきました。その結果、収益性も向上し、大きく発展する企業へと西友を変革できたと考えております。今後は、西友の強みとトライアル社の先進的な情報システム、データ活用等の強みをいかし、両社が協力し合って更に発展していくことを期待しております」とコメントしています。
これまでのKKRとウォルマートの取り組み
西友における商品の品質・品揃えの強化、オペレーション効率の改善、新たなテクノロジー導入などの施策により、企業の収益性を高め、消費者への価値を創造することで継続的な成長を実現すべく様々な支援を行なってきたとのこと。具体的な取り組みは以下の通り。
・生鮮食品や惣菜、西友のプライベートブランドである「みなさまのお墨付き」を中心としたオリジナル商品の品質と品揃えを強化し、現在の西友の重要な強みに
・フルセルフレジや自動発注システム等を導入し、標準作業工程を定義し、オペレーション効率を大幅に改善
・伝統的なGMS業態から、より食品と日用品に特化する食品スーパーへ変革
・顧客体験を洗練させるべく、全社ITシステムを刷新し、西友のDXを加速