アニメ・マンガ

手塚治虫×桜庭一樹「小説 火の鳥 大地編」連載開始に向けて、桜庭氏と挿絵の黒田氏のコメント公開~「実物に目を通したとき心が震えた」と桜庭氏。「黎明編」が無料配信

[2019/3/25 11:00]

 朝日新聞社が創刊140周年を記念して、朝日新聞 土曜別刷り「be」で「小説 火の鳥 大地編」の連載が、ついに2019年4月6日(土)から開始します。未完となっている故・手塚治虫氏の作品「火の鳥 大地編」の構想原稿をもとに直木賞作家・桜庭一樹氏が長編小説を執筆します。挿絵は、「鉄腕アトム」をはじめ手塚作品をモチーフにした作品を多く発表している、イラストレーター・黒田征太郎氏が手掛けます。

 この連載開始を記念して今回、桜庭一樹氏、黒田征太郎氏のコメントが公開されました。「実物に目を通したとき心が震えた」(桜庭氏)、「手塚さんという巨人と、桜庭さんという新兵器に挟まれて僕がどう反応していけるか、楽しみ」(黒田)と語るなど、本作への意気込みが伝わってきます。


 漫画「火の鳥」は、1954年の「漫画少年版黎明編」から1988年の「太陽編」まで、手塚治虫氏が最晩年まで描き続けた壮大なスケールのライフワーク。不死鳥である火の鳥を追い求める人々を描き、人間の尊厳や愚かさを描く壮大なストーリーで、「人間とは、生命とは何か」を、約65年前から問い続けている物語です。

 今回、連載開始される 「小説 火の鳥 大地編」は、1年間、毎週掲載される予定で、桜庭氏が描く新たな火の鳥の世界と、黒田さんの生命の躍動を感じるイラストで展開されます。なお、新規で3カ月以上購読で、先着500名に、第23回手塚治虫文化賞の記念品「火の鳥ピンバッジ」(非売品)がプレゼントされます。

「火の鳥ピンバッジ」(非売品)

 さらに、「小説 火の鳥 大地編」の連載スタートを記念し、「be」では漫画「火の鳥」の「黎明編」が無料配信されています。

桜庭一樹氏のコメント

 “マンガの神様”が遺(のこ)した『火の鳥』のシノプシスがあるって!?
 実物に目を通したとき心が震えました。

 まず、手塚先生ならこう描かれたはず、という忠実なアウトラインを引き、その上で、平成のその先へと生きていく自身の感覚と、小説ならではの表現を使って、火の鳥に再び熱い命を吹きこもうとしています。

 わたしは小学校の図書室で『火の鳥』をみつけ、夢中で読みました。 この物語に流れている、命への賛歌、平和主義、そして、人間の気高さを信じる手塚先生から伝わる“悲しみを伴った独特のオプティミズム”から多大な影響を受けて大人になりました。

 『火の鳥』の名に恥じない大ロマンに。そして、つぎの時代に繋がる新しい物語に。今年、全力で『大地編』を紡ぎたいと思っています。

【桜庭一樹氏のプロフィール】
1971 年生まれ。2007 年、鳥取の旧家に生きる女 3 代とその一族を描いた長編『赤朽葉家の伝説』 で日本推理作家協会賞、08 年、父と娘の切ない関係を描いた『私の男』で直木賞を受賞。

黒田征太郎氏のコメント

 僕は、手塚治虫になりたかった少年です。9歳のとき、戦後の闇市で見た『新宝島』で、疾走する車のタイヤが楕円(だえん)に描かれているのを見て「これだ!」と思った。手塚さんの本を買うために新聞配達をしました。食べるため早く大人にならねばならない時代でしたが、手塚さんは心と頭に深く入り込んでいました。

 昨年手塚さんを追憶する展覧会を開いた後も、手塚さんに質問するような、返答するような気持ちで、気が済まずにアトムの絵を描き続けています。

 『火の鳥』には、手塚さんの時空を超えた自己表現がある。これまで、野坂昭如さんや中上健次さんといった作家とつきあってきましたが、桜庭さんは僕からしたら子どものような世代。手塚さんという巨人と、桜庭さんという新兵器に挟まれて、僕がどう反応していけるか、楽しみにしています。

【黒田征太郎氏のプロフィール】
1939年生まれ。 69 年、グラフィックデザイナーの長友啓典氏とデザイン事務所「K2」設立。同年、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ受賞。野坂昭如さん著「戦争童話集」の絵本化や映像化を手がける。

手塚治虫氏のプロフィール

 1928 年生まれ。漫画やアニメーションで、生命の尊さをテーマとした様々なヒット作品を生み出し、常に新しい表現世界を開拓していった。1989年、60歳でその生涯を閉じた。

[古川 敦]