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錆びない凍結防止剤「プロナト」! NEXCO中日本が“塩ナト”に変わる新たな凍結防止剤を試行導入~食品保存料のプロナトと塩ナトを1:9で混ぜると蒸留水と同等

[2018/1/29 23:15]

 NEXCO中日本が、富山県立大学および国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所と共同で、橋梁の鉄筋などの金属腐食の抑制を目的として開発してきた、プロピオン酸ナトリウム(プロナト)を活用した新たな凍結防止剤を、2018年3月~4月(雪氷対策期間終了まで)まで高速道路本線で試行的に散布し、散布作業における課題への対応や散布効果の検証を行なうと発表しました。

プロピオン酸ナトリウム(顆粒状)

 試行導入区間は東海北陸自動車道 白川郷IC~五箇山IC間(雪氷作業基地は五箇山IC)。検証内容は「作業性」や、「プロナト」はわずかに特有の臭いがあるため「臭気の状況」、「路面状態」、「路面のすべり抵抗性」、「金属腐食抑制効果」となっています。

試行導入区間
連続路面すべり抵抗値測定車(寒地土木研究所所有)

 以前から、高速道路の冬期走行時の安全性を確保するため、凍結防止剤といえば主に「塩化ナトリウム」(塩ナト)が使用され、1993年頃からスパイクタイヤが使用禁止以降、塩ナトの使用量が順次増加し、それに伴い橋梁などで塩害による劣化の事例が多く見受けられるようになってきたとのこと。

 そのため、劣化抑制に有効な凍結防止剤の開発が求められ、NEXCO中日本は塩ナトよりも金属腐食抑制効果に優れる「プロピオン酸ナトリウム」(プロナト)に着目し、2015 年度より現場への適用性を検討。プロナトは、プロピオン酸のナトリウム塩で、細菌や真菌の増殖を抑制する効果があるため、主に食品保存料として使用され、国内の年間使用量は約36トン。

 経済性を考慮し、塩ナトとプロナトを混合して使用することを前提として検討し、北海道立総合研究機構工業試験場が定める金属腐食性試験を実施した結果、比較試料の蒸留水、塩ナトおよび塩カルの腐食減少量(mdd)は、それぞれ8.6、22.5、27.5であったことに対して、プロナトの腐食減少量は0.3でほとんど金属腐食しない結果となり、塩ナト・プロナト混合物は重量比 8:2~9:1 の間で蒸留水と同等の結果が得られ、金属腐食の進行を大幅に抑えられとのこと。

 凝固点は、濃度20%の水溶液で測定した結果、塩ナトの凝固点-19.8度に対し、プロナトは-17.0度と高いものの、塩ナト・プロナト混合物(重量比8:2)は-18.9℃と、塩ナトの凝固点に近くなっています。

 また、雪氷作業基地において、市場で流通している粉末状のプロナトを使用して水溶液を作製した結果、プロナトが全体に飛散し、著しく作業性が悪くなっため、プロナトの形状を粉末状から1㎜程度の顆粒状にしたところ、材料飛散の課題が解決したとしています。

粉末状プロナト投入後の雪氷作業基地の状況
[古川 敦]