ライフ

エアコンは暖房もつけっぱなしが安い!? ダイキンの調査隊が徹底検証~30分の外出なら「つけっぱなし」がお得、1日13時間停止しても30円しか安くならない!?

[2018/2/19 15:29]

 ダイキン工業が2011年6月より活動している、空気にまつわる素朴な疑問を検証する「ダイキン 空気のお悩み調査隊」で、「エアコン暖房をつけっぱなしにするのとこまめに入り切りするのでは、どちらが安くなるの?」の検証結果を発表しました。

 同調査隊は、2016年の夏にマンションのほぼ同じ条件の2部屋を使ってエアコン冷房を「つけっぱなし」にした場合と「こまめに入り切り」した場合の比較実験を実施し、話題なりました。「夏場は日中30分程度の外出であればつけっぱなしの方が電気代は安くなる」という結果に対し、「冬場のエアコン暖房の場合はどうなのか」といった多くの問い合わせがあったとのこと。

 そこで、今回は2016年の夏に実施した実験の冬バージョンとして「エアコン暖房をつけっぱなしにするのと、こまめに入り切りするのでは、どちらが安くなるの?」をテーマに、どのような条件であれば冬のエアコン暖房の電気代が安くなるのか検証。京都市内のほぼ同じ条件のマンション2部屋を使って実際にエアコン暖房を「つけっぱなし」、「こまめに入り切り」で運転し、検証した結果が発表されました。

【検証実験の環境】
実験場所:京都府京都市
建物構造:SRC造 13階建て
築年月:平成14年8月竣工 築15年6カ月
部屋の広さ:14.1帖(4階と6階の階違いの同じ間取りの部屋を使用)
使用したエアコン:「うるさら7 RXシリーズ」 S40VTRXS‐W 4.0kW(主に14畳用)
エアコン設定:暖房24度、風量自動

実験1:「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなる時間帯を探る!

 24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、30分間隔でON/OFFを繰り返したエアコンの消費電力量を比較し、「つけっぱなし」の方が安くなる時間帯を調査した結果、全ての時間帯で、30分間隔で「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」にした方が消費電力量は小さく、電気代が安くなったとのこと。

 「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」のそれぞれの消費電力量と電気代の結果を見ると、全ての時間帯で「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなり、30分程度なら、エアコン暖房を切るより「つけっぱなし」がお得という結果となっています。

 このような結果になった理由として、「こまめに入り切り」した場合、何度もエアコンの運転をONにした直後に多くの電力を消費したということが考えられるとしています。エアコンは設定温度を維持する時よりも、運転を開始した直後の室内温度と設定温度の差が大きい時に電力を多く消費し、エアコンを「つけっぱなし」、「こまめに入り切り」したときの消費電力量は、グラフ内、黄色で塗られた面積の大小で決まります。頻繁なエアコンの入り切りは、時に消費電力量を大きくしてしまうことがあるとのこと。

 これらのことから、短い外出であっても、部屋を不在にするときにはこまめに運転をOFFにするといったエアコン暖房の使い方は、省エネ、エコという視点からみると、条件次第では逆効果になる可能性があることが分かります。

実験2:「つけっぱなし」と、生活スケジュールに合わせて「こまめに入り 切り」した場合の消費電力量を比較!

 1日の生活スケジュールを想定して、外出時/在宅時に関わらず24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、外出時に運転をOFFにしたエアコンの消費電力量を比較。

 その結果、2時間の外出をした夜間(18:00~23:00)は、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さく、電気代が安くなっています。1日(24時間)の消費電力量を比較してみても、12.7kWh(約343円)、「こまめに入り切り」が11.6kWh(313円)となり、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さくなりましたが、電気代の差は約30円程度でした。「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さいものの、わずかな電気代の差で一日中温かい部屋で快適に過ごせるという見方もできます。

 「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」のそれぞれの消費電力量と電気代の結果を見ると、2時間の外出をした夜間(18:00~23:00)の消費電力量は、「つけっぱなし」が3.4kWh(約92円)、「こまめに入り切り」が2.4kWh(65円)となり、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さくなり30分間隔で「こまめに入り切り」をした実験とは反対の結果で、エアコンの運転をOFFにする時間がある程度長くなると、「こまめに入り切り」の方が安くなるということがわかります。

 1日(24時間)「つけっぱなし」にするよりも1日の想定生活スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した方が消費電力量が小さいという結果は当たり前のように思えますが、スケジュール運転は1日(24時間)の半分以上、13時間もの停止時間があるにもかかわらず、24時間「つけっぱなし」にした場合と比べて電気代換算で約30円しか安くなっていません。

 なぜ13時間も停止している「こまめに入り切り」と24時間「つけっぱなし」の差がこれほど小さいのかというと、室温推移をみるとわかります。「つけっぱなし」は当然、室温にほとんど変化がありません。また部屋の躯体(天井、床、壁)が蓄熱されているため、少ない電力でエアコンを運転できる状態になっています。

 一方、「こまめに入り切り」は睡眠(23:00~7:00)や日中・夜間の外出時の運転停止のたびに室温が低下し、何度も冷え切った状態から設定温度まで上げていることが分かります。そのため多くの電力を消費してしまっています。今回の結果としては、想定スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さくなりましたが、「こまめに入り切り」する頻度がもう少し増えると、結果が逆転する可能性も十分考えられるとしています。

ダイキンからのアドバイス

 冬のエアコン暖房は電気代が高いというイメージがあります。事実、エアコンの暖房運転は冷房運転と比べると消費電力量が大きくなります。一般的な例で考えると、夏は外気温35度、設定温度27度でその差は8度ですが、冬は外気温7度、設定温度20度でその差は13度にもなります。エアコンは設定温度に到達するまではフル稼働するため、外気温と設定温度の差(熱負荷)が大きくなる冬は必然的にエアコンが消費する電力量が大きくなります。

 冬のエアコン暖房の電気代は他の暖房器具より高いというイメージが未だに残っていますが、主な暖房器具の定格消費電力を比較してみると、エアコンの消費電力は、他の暖房器具と比べて決して高くないことが分かります。

 電気代は、環境によって大きく左右されるため、どんな時でも当てはまるわけではありませんが、今回の実験と条件が近い場合、30分程度の外出であれば、運転をOFFにするよりも「つけっぱなし」にした方がお得になる可能性があります。

 一方、1日の生活スケジュールを想定した実験では、2時間の外出をした夜間は「つけっぱなし」にするよりも、運転をOFFにした場合の方が消費電力量が小さいという結果になり、単純に「つけっぱなし」にしておけば電気代が安くなるというわけではありませんでした。1日(24時間)で比較してみても、「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さかったものの、電気代の差は約30円程度でした。

 「こまめに入り切り」する場合と大きく変わらない電気代で、「つけっぱなし」にして室内の温かさを維持しながら快適に過ごす方法もありそうです。実験結果は、あくまで今回の測定条件、測定環境から得られたもので、室内機、室外機の設置状況や天候、日照、最高気温、最低気温、部屋の気密性、断熱性などによって大きく変わってきます。やみくもに「つけっぱなし」にするのではなく、室温、設定温度、外気温の3つの温度を意識しながら、必要に応じて「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を使い分けましょう。

[古川 敦]