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【食レポ】東京でも珍しい“赤シャリ”の鮨が銀座よりずっと割安に楽しめる「ゆうひ鮨」で、江戸前鮨と一品料理を堪能

[2015/12/9 05:37]

 職人の技が光る鮨店は敷居が高く、なかなか気軽には入れません。以前利用した銀座の鮨店は、銀座としては比較的リーズナブルなお店でしたが、それでも鮨のコースが10,000円以上。鮨とあわせてお酒を楽しんだ場合には、お酒の量にもよりますが、15,000円から20,000円ほどと、かなり高額になります。

 今回ご紹介する「ゆうひ鮨」は、田端駅からも駒込駅からも歩いていける距離にあります。駒込駅近くには江戸時代には侍屋敷が並んでいたエリアがあり、その一帯は現在も高級住宅街になっていますが、全体としては下町の風情が感じられる町並みです。

 そうした立地だけに、「ゆうひ鮨」は本格的な鮨のコースが6,000円から用意されています。コースは3コースで、6,000円コースは握り8貫と旬の一品料理3品、8,000円コースは握り8貫と旬の一品料理5品、10,000円コースは握り9貫と旬の一品料理7品。

 「ゆうひ鮨」は完全予約制とあって一見さんよりも常連客が多く、落ち着いた雰囲気で鮨や料理を楽しめるのが嬉しいところです。

 コスパに優れているだけでなく、「ゆうひ鮨」では、いまは東京でも数少ない赤酢を使った江戸前鮨が楽しめるのも特徴。そんなわけで今回は、赤酢を使用したシャリの味わいを楽しみに足を運びました。ちなみに今回は頼む人がいちばん多いという、江戸前握り8貫と旬の一品料理5品が楽しめる8,000円コースを予約しました。

この日足を運んだゆうひ鮨は駒込駅から歩いて5分ほどの場所にある完全予約制の鮨店
ゆうひ鮨は東京でもいまは数少ない、赤酢を使ったシャリで握る江戸前鮨

 赤酢を使ったシャリに使用している米は、名水百選にも選ばれた「桂葉清水」のある宮城県栗原市で栽培された「東北194号」を使用。ご主人の説明によると、東北194号はササニシキに近い食味が特性で、シャリ用の米に最適な粘り気が少ない米とのこと。

シャリに使われている米は「東北194号」。ササニシキ系統の新種で、名水桂葉清水のある宮城県栗原市で生産されたもの

 この日飲んだ日本酒は、鳥海山の伏流水を使ったという純米吟醸酒「鳥海山」。甘旨系ですが食中酒向けのさらりとした酒で、鮨の味を引き立てます。日本酒とあわせて出される“和らぎ水”も鳥海山の水で、ミネラル分の少ない軟水とあってごくごく喉を通ります。日本酒は鳥海山と三千盛が定番品として常備されていて、辛口好みには三千盛がおススメとのこと。そのほか、ビールやワイン、焼酎なども用意されています。

今回注文した鳥海山や、日本酒とあわせて飲む和らぎ水は全て鳥海山の伏流水を使っているとのこと

 最初の一品は、北海道虎杖浜のたらこを出汁で煮付けたもの。たらこならではのプチプチっとした食感と程よい出汁との相性抜群。非常にお酒が進みます。

虎杖浜のたらこを出汁で煮付けた一品。プチプチとした食感とほどよく出汁が効いて美味

 鮨店のガリと言えば甘いイメージがありますが、ゆうひ鮨のガリは甘味よりも生姜のピリ辛さが立ったもの。生姜のピリ辛が立ったガリなのは自家製ならではとのこと。

ゆうひ鮨のガリは自家製で、甘味よりも生姜のピリッとした刺激的な辛さが後引く一品

 赤酢のシャリの見た目が気になったのでシャリだけ用意してもらうと、醤油をたらしたご飯のように赤茶色い色がついています。赤酢であわせたシャリは酢のつんとくるとがった匂いがなく、甘味が立って優しい味わいです。

赤酢のシャリは、酢のとがった匂いがなく、優しい味わい

 赤酢のシャリの風味を堪能したあとは、いよいよ握り鮨を楽しむことにします。まずはコハダ、キス、きびなごの握りを堪能。コハダはほどよくハリがあって、赤酢のシャリと相性抜群。キスは身にほのかな甘さとほど良いハリを感じる一品。きびなごはプリっとした食感と、青魚ならではの独特の風味を感じます。

コハダはほどよくハリがあって、赤酢のシャリと相性抜群
天ぷらとして使われることの多いキスは、甘味とハリのある一品
九州で親しまれるきびなごは、プリっとした食感と青魚ならではの独特の風味を感じます

 鮨を3貫楽しんだあとは一品料理として、牡蠣の潮煮、真鱈の白子ポン酢、熟成天然ぶりの刺身の順で一品ずつタイミングを見て提供されます。

 牡蠣を出汁で炊いた潮煮は、プリプリとしたかきの食感のとともに出汁からも牡蠣の旨味をしっかりと感じられます。続いての真鱈の白子ポン酢は、白子の水分が多い時期とあって白子ならではのクリーミーさの後にほど良い汁気を感じます。熟成させた天然ぶりの刺身は、ぷりぷりとした食感の後に脂の旨味を感じます。

牡蠣を出汁で炊いたかきの潮煮は、プリプリとした牡蠣の食感が美味しく、出汁からも牡蠣の旨味を強く感じられます
真鱈の白子ポン酢は、この時期は水分が多いとのことで、クリーミーさの後にほど良い汁気が
熟成させた天然ぶりを使った刺身は、ぷりぷりとした食感の後に、脂の旨味が感じられます

 一品料理を3品楽しんだ後は鮨に戻り、煮はまぐり、いくらの順で握りが出てきました。柔らかく甘く煮付けられた煮はまぐりは、赤酢のシャリとの相性抜群で、巻かれた海苔の香りが立つ一品。いくらの軍艦巻きは、いくらのプリプリした歯ざわりと海苔の香りが癖になる味わいです。

煮はまぐりは、柔らかく甘く煮こまれていることで、赤酢のシャリとの相性抜群
いくらの軍艦巻きは海苔の香りも良く、プリプリした歯ざわりが癖になる一品。

 続いて玉子が出されます。玉子は鮨店によって、魚のすり身を使ったスイーツのように甘い卵焼きから塩味の卵焼きまでいろいろですが、ゆうひ鮨の玉子焼きは出汁のきいただし巻き卵で、断面や表面に焦げ目がまったくない、丁寧な仕事を感じる優しい味わいです。

、再びつまみに戻って、本ししゃもが出てきました。本ししゃもはほどよく脂が乗って美味しく、骨が柔らかなこともあって、頭から尾までまるごと完食。

 続いては、牡蠣の潮煮から出た出汁を使ったしじみのお吸い物。牡蠣の旨味としじみの旨味が合わさったお吸い物は、強い旨味を持つ貝類の旨味が重なった相乗効果で、今まで感じたことの無いくらいの強い旨味を感じます。

だし巻き卵は、出汁のきいた優しい味。断面に焦げ目がまったくなく、丁寧な仕事を感じます
本ししゃもは程よく脂が乗っていて、骨も柔らかなこともあって、頭から尾まで全て平らげました
牡蠣の潮煮の汁としじみをあわせたお吸い物は、違う種類の貝の旨味が合わさった濃厚な旨味を感じます

 吸い物の後は鮨に戻り、中トロを漬けにした漬けまぐろ2貫が出されます。中トロが使われていることもあって、身のハリのバランスと脂のノリ具合のバランスが良く、漬けの味の濃さも良い塩梅で絶品。

 最後に出された煮穴子はトロケるほどにふんわり柔らかく、脂のノリ具合も抜群。最後にさらに食べたいと思わせる一品が出てくるところに、また来たいと思わせる仕掛けを感じました。

まぐろの中トロは漬けにして提供され、トロならではのトロケる食感と身のハリのバランスが秀逸です
最後はトロケるほどにふんわり柔らかな煮穴子を堪能して食事を終了しました

 ゆうひ鮨は銀座価格に比べるとずっと割安に本格的な赤シャリの江戸前鮨が楽しめるだけでなく、ご主人は日本料理店で修行経験があることから、通常は鮨屋では出てこないような一品料理が楽しめるのも魅力。別に一品料理を注文しなくても、コースで鮨とつまみになる一品料理が交互に楽しめるので、お酒も楽しみたい左党にはとくにおススメです。

 ご主人が料理や食材の説明も丁寧にしてくれて、コースは6,000円、8,000円、10,000円の3コースと明朗会計なので、カウンターの鮨屋は敷居が高く感じる初心者でも安心。

 シメに後引く余韻が残る煮穴子の握りを楽しんだことで、また食べたい、また行きたいと思わせるテクニックに心奪われたこともあり、機会があればまた足を運んでみたいと思います。

[池延大栄(大帝オレ)]