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ラーメン店の倒産が初の年間40件超えで過去最多 帝国データバンクが調査結果を発表~「Go Toの恩恵が受けにくかったことなども回復が遅れた要因の一つ」

[2021/1/13 15:13]

 帝国データバンクが13日、2020年1~12月の間に発生したラーメン店の倒産が46件に達し、前年を10件上回って過去最多を更新、倒産が大幅に増加した調査結果を発表しました。2019年の36件を10件上回っているほか、過去20年間でも最多を更新。倒産が年間40件を超えたのは2020年が初めてとなり、コロナ禍でラーメン店の厳しい経営環境が改めて浮き彫りとなったとしています。

ラーメン店の倒産件数 推移(帝国データバンク調査)

 ラーメン業態では、これまで参入障壁の低さを背景に様々な味や特徴を持つ新規店が次々とオープン。全国で2万店にも上るラーメン店同士の消耗戦が年々熾烈化したほか、原材料費や人件費などのコストアップ、さらには「1,000円の壁」といった消費者心理も背景に低価格・薄利経営での体力勝負が続いたことで、「六角家本店」(神奈川)など老舗店でも経営破綻する遠因にもなっていた分析。

 こうした中、2020年はコロナ禍で外出自粛が広がったことで集客力が急激に低下するなど、経営環境は一層悪化。豚骨ラーメン店の「長浜将軍」(福岡)など、新興店から人気店、チェーン店でも経営が行き詰る事例が相次いでいるとのことです。

 2020年の外食業態をめぐっては、コロナ禍での外出自粛、所得の落ち込みなどを背景に需要が急減。総務省の家計調査によると、昨年の外食支出額はGo To イート事業が開始した10月こそ前年並みに改善したものの、新型コロナが国内で本格的に感染拡大した3月から9月にかけては前年を下回って推移。特に4月は前年比6割超の大幅減となるなど、非常に厳しい経営状態を強いられてきています。

 ハンバーガーや寿司、個食ニーズをとらえた焼肉などの業態では、テイクアウトやGo To事業による需要増を背景に前年を上回る好調ぶりを見せている一方で、ラーメンなど中華そばは3月以降前年を下回る水準が続くなど、麺類業態全体の不振が鮮明に。

 ラーメン店はもともと狭小な店舗が多く、コロナ禍以降は各店とも席同士の間隔をあけるなど感染対策を念入りに進めてきたものの、「人の出足が鈍い」といった声がラーメン店からあがるなど想定以上に客足の戻りが鈍かったこと、ラーメン自体が日常食で単価が1,000円を下回るなど他に比べ安価で、商品単価が高いほど還元額の高いGo To事業の恩恵が受けにくかったことなどが、ラーメン需要の回復が遅れた要因の一つと、帝国データバンクでは分析しています。

 こうした経営環境も背景に、大手ラーメン店でも業績面で苦戦を強いられ、上場する主要ラーメンチェーンのうち、4社が20年度決算の前期比減収・経常赤字を予想。低価格ラーメンチェーンの幸楽苑と日高屋は、それぞれ通期で前年比2割超の大幅減収となる見通し。なかでも日高屋は、上場以降で初めて当期純利益が赤字に転落。北陸地方を中心に「8番らーめん」を展開するハチバンは前年比3割の減収、JBイレブンも同1割超の減収を見込んでいます。いずれの店舗も、新型コロナによる限定営業や休業による客足減少の影響を大きく受けるなどして、例年に比べて厳しい業績推移を織り込んでいます。

 しかし、大手グルメサイト「ホットペッパー」が2020年8月に行なった調査では、デリバリーやテイクアウトを除いた「外食」で食べたい1位はラーメンとなるなど、外食における魅力度が依然として高いことが明らかになっています。

 そのため、既にソーシャルディスタンスを意識した店内づくりによる集客以外にも、デリバリーの取り扱いやEコマース事業といった、店舗運営に捉われない新たな販売チャネルの開拓が大手・中小ラーメン店を問わず急ピッチで進んでいます。

 ファストフードなど他業態とのテイクアウト市場とも競合が予想されるものの、幅広い層から親しまれているラーメンの人気は依然として高く、コロナ禍の今でも潜在的な需要が見込まれ、飲食自粛の緩和は当面見通せないなか、帝国データバンクでは「脱店舗運営の新しい『ラーメンビジネス』をどう確立できるかが、今年のラーメン業態の先行きを占う重要なキーワードとなる」としています。

[古川 敦]