人造ステーキ実用化への第一歩! 日清・東大・JSTが世界初となるサイコロステーキ状ウシ筋組織の作製に成功

　日清食品ホールディングス22日、東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授の研究グループと、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の「未来社会創造事業」に採択された研究で、牛肉由来の筋細胞を用いて、サイコロステーキ状のウシ筋組織を作製することに世界で初めて成功したと発表しました。

　なお、この研究内容は日本農芸化学会2019年度大会(東京農業大学 世田谷キャンパス)で2019年3月24日(日)に発表されます。

　世界的な人口増加やライフスタイルの変化により、将来、地球規模での食肉消費量の増加が見込まれている一方で、家畜の生産には大きな環境負荷がかかることや、飼料や土地の不足が大きな問題となっています。「培養肉」とは、動物の個体からではなく、細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のことで、家畜を肥育するのと比べて地球環境への負荷が低いことや、畜産のように広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能などの利点があるため、従来の食肉に替わるものとして期待されています。

　近年、世界中で「培養肉」の研究が行なわれており、そのほとんどが「ミンチ肉」を作製する研究ですが、同研究グループは、肉本来の食感を持つステーキ肉を「培養肉」で実現する目標に向け、筋組織の立体構造を人工的に作製する研究に取り組んでいるとのこと。

　肉本来の食感は、筋肉に含まれる筋組織の立体構造から生み出さ、この立体構造を体外で人工的に作製するためには、筋細胞を増やすだけでなく、筋細胞をより成熟させる(細胞同士を融合させ細長い構造に変化させる) 必要があります。しかし、生体内環境と異なる体外で筋細胞を成熟させるためには、必要な栄養を行きわたらせ、細胞を適切に配置する技術が求められていました。

　同研究グループは、培養過程でウシ筋細胞にビタミンCを与えることで、ウシ筋細胞の成熟が促進されることを確認。また、厚みのある培養肉を得るために、ウシの筋細胞を従来の平面的な培養ではなく、コラーゲンゲルの中で立体的に培養したところ、筋組織に特有の縞状構造(サルコメア)を持つ、細長い筋組織の作製に成功したとのこと。

　さらに、筋細胞の集合体を積層し、特殊な方法を用いて培養することにより、世界で初めてサイコロステーキ状(1.0㎝×0.8㎝×0.7㎝)の大型立体筋組織を作製できたとのこと。

　これらの技術を発展させることで、今後、さらに大きな筋組織の作製も可能と考えられ、肉本来の食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けた第一歩としています。