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“子猫は死んだら冷凍庫”、“成猫は1匹1,080円で業者に” 「『奴隷』になった犬、そして猫」が刊行~いまだ5万匹の犬猫殺処分の実態を執念の取材で暴く

[2019/11/25 22:49]

 「猫は照明を1日12時間以上あてると、年3回は産める」。ペット流通の闇を暴いた「犬を殺すのは誰か」から約10年。太田匡彦記者による最新刊「『奴隷』になった犬、そして猫」が2019年11月20日に発売されました。四六判並製448ページで、価格は1,500円(税別)。

 犬に続き、空前の猫ブームではじまった“増産”態勢。「かわいい」「いいね」の裏側で消えてゆく命。子犬や子猫。可愛ければ可愛いほど喜ばれる世界で、“可愛くなくなったもの”を襲う悲劇。ビジネスと“好み”に翻弄される命を追い、人間の愚行と、理不尽な社会を執念の取材が暴くとしています。

 シベリアンハスキー、チワワ、ミニチュアダックス……、かつて巻き起こった犬ブームと同じことが猫でも…。太田氏の前著「犬を殺すのは誰か」から約10年、猫ブームを追い風に、犬に起こった悲劇が繰り返されている……。

 「『奴隷』になった犬、そして猫」の中で、かつてある繁殖業者のもとで働いていたというアルバイトの女性は「とにかく病気の子が多い。くしゃみや鼻水を出しながら繁殖に使われている子もいて、そういう猫たちは、絶対にお客さんの目には触れないように隠されています。働いている間は頻繁に猫の死体を目にしました。子猫は死ぬと冷凍庫に保管し、ある程度死体がたまると、業者を呼んで引き取ってもらっていました。成猫は1匹1,080円で引き取ってもらっていたようです」と証言しています。

 また別の繁殖業者は、不要になった繁殖犬を「埋めているんだ」と話し、「どうやっているの?」と尋ねると、「農薬を使ってんだよ」と明かしたと書かれています。

 2019年6月の改正動物愛護法は、20年以降順次施行されます。「8週齢規制」をはじめ、大きな前進が見られる一方で、いまだおそよ5万匹もの犬・猫が毎年殺処分され、繁殖から販売の過程でも年間25,000匹もの命が消えてゆきます。

「奴隷」になった犬、そして猫(著:太田匡彦)内容

第1章 猫ブームの裏側、猫「増産」が生む悲劇
第2章 「家族」はどこから来たのか、巨大化するペットビジネス
第3章 「骨抜き」の12年改正、あいまい規制が犬猫たちの「地獄」を生む
第4章 【ドキュメント改正動物愛護法 ~前編~】環境省は「抵抗勢力」なのか、年改正を巡る「攻防」始まる
第5章 ドキュメント改正動物愛護法 ~後編~】8週齢規制ついに実現、犠牲になった「天然記念物」
終章  「家族」になった犬、そして猫
【巻末付録】
動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)2019年6月改正

著者プロフィール

太田匡彦 (おおた・まさひこ)
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者やメディアラボ主査を経て、文化くらし報道部記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。

[古川 敦]