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日本初の「食べられる培養肉」の作成に成功! 日清と東大大学院竹内教授が発表~研究関係者による試食も実施

[2022/3/31 22:47]

 日清食品ホールディングスと東京大学大学院情報理工学系研究科 竹内昌治教授(東京大学 生産技術研究所 特任教授[学内クロス・アポイントメント])の研究グループが31日、「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功したと発表しました。

 日清食品HDと竹内教授の研究グループは、「培養ステーキ肉」の実用化を目指した研究を2017年度から共同で進めており、今回の成果で、肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けて大きく前進したとしています。

 世界的な人口増加やライフスタイルの変化により、将来、地球規模で食肉消費量の増加が見込まれている一方で、畜肉の生産が地球環境に与える負荷や、家畜を育てるための飼料や土地の不足も大きな問題となっています。「培養肉」とは、畜肉の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のことで、家畜を飼育するのと比べて地球環境に与える負荷が低いほか、畜産のように広い土地を必要とせず、さらには厳密な衛生管理が可能になるなど、さまざまな利点があることから、食肉の新たな選択肢の一つとして期待されています。

 日清食品HDと竹内教授の研究グループは、2019年に世界で初めて牛肉由来の筋細胞を用いたサイコロステーキ状(1×0.8×0.7㎝)の大型立体筋組織の作製に成功。現在は、肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実現に向け、立体筋組織のさらなるサイズアップや、おいしさと低コストを両立する大量生産技術の確立を目指して研究を進めているとのことです。2025年3月までに厚さ2×幅7×奥行7㎝の大型立体筋組織の作製を目指すとしています。

 「食べられる培養肉」の作製には「食用可能な素材のみを使用すること」「研究過程において食べられる制度を整えること」の2つの大きな課題がありました。これまでの「培養肉」は、牛肉由来の筋細胞と食用ではない研究用素材で作製されていましたが、今回、日清食品HDと竹内教授の研究グループは、独自に開発した「食用血清」と「食用血漿 (けっしょう) ゲル」(いずれも特許出願中)を使用することで、食用可能な素材のみで「培養肉」を作製できるようになったとしています。なお、この研究成果は、「第21回 日本再生医療学会総会」において2022年3月17日(木)に発表されました。

 また、この成果をもとに、日清食品HDが「食の安全」に関する知見を生かして構築した「培養肉」を食べるまでのプロセスについても、東京大学の倫理審査専門委員会から承認され、「素材」と「制度」という2つの課題をクリアしたことで、産学連携の「培養肉」研究において日本で初めて「食べられる培養肉」を作製し、3月29日(火)には研究関係者による試食を行なったとのことです。

 従来の機器を使った分析に加え、人による官能評価が可能になったことで、味、香り、食感などの“おいしさ”に関する研究開発が大きく進展。肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に一歩近づいたとしています。

 「培養肉」を作製するためには、一般的に「細胞」「栄養成分」「足場材料」が必要となります。日清食品HDと竹内教授の研究グループが独自に開発した「食用血清」は、細胞を育てるために必要な栄養成分である「培養液」の素材として使用。また、同じく独自開発した「食用血漿ゲル」は、立体筋組織(培養ステーキ肉)を作製するために必要な細胞の足場材料となる素材です。

 既存の食用素材だけでは十分な栄養成分の供給や立体筋組織の構築が困難でしたが、今回開発した「食用血清」と「食用血漿ゲル」を使用することで、細胞の生育に適した条件で培養することが可能になったとしています。

[古川 敦]